もっと言えば、これが一番大切なわけですが、35歳までフリーターや非正規をやってきた人間は、「自分が経営者としてコスト管理をしたり、部下を教育する」という経験はしていないばかりか、反対に「経営側を批判したり、経営側から切られないように防衛一本」の生き方しかしていない、そんなイメージで見られています。
そうした人材に、正社員として「技術面の機密」であるとか「実はブラックな実態など、経営上の機密事項」へのアクセス権を与えるということは、日本の企業はしたくないのです。まして「この会社の企業風土に染まってほしい」と思っても、「長年にわたって非正規の心構えに染まった人間は、斜に構えてしまって無理」というように考えます。
企業側の考え方としては、こうした辺りを全く疑っていないようなのですが、これは非常におかしな考え方です。とにかく日本の「氷河期世代」あるいは「ロスジェネ」と言われる世代は、世界史上「高学歴人口を全く使いこなせていない巨大な人材のムダ」の事例になっているわけで、これは雇用側も含めて本当に反省し、恥ずかしく思わなくてはなりません。
この問題への答えは簡単です。新卒一括採用と終身雇用制をやめれば良いのです。そして、時代はその方向に向かっています。ようやく経団連も「もう終身雇用は終わり」というようなことを言い始めていますし、その終身雇用をやめるという意味合いの中に、
1.新卒には終身雇用を保障しない
2.競争力のなくなった中高年は以降の雇用を保障しない
というだけでなく
3.「年功序列エスカレータ」を廃止して、年齢を問わず優秀な人材は採用する
という点を加えるべきであり、そうなればこの2つの問題はつながっていくわけです。
理念的にはそうなのですが、問題は具体策です。
ここで原則を確認しておくのであれば、「年功序列エスカレータ」を廃止するということは、企業として好きなように採用して、好きな時に切れるという一方的なものであってはなりません。
かといって、10年契約とか5年契約という「終身雇用ではない」形にしても、組合等が力を持てば、結局は経済全体の生産性は弱くなってしまいます。
鍵となるのは、専門職制度です。いわゆるジョブ型というやつで、まず個人がスキルを磨いておいて、そのスキルが労働市場で評価される形で、転職を繰り返しながら年収を維持してゆくという制度です。制度というより、欧米とアジアでは当たり前の考え方です。日本でもこうした制度が成立しなくてはなりません。