国際交渉人が警戒。中東地域に嵐を呼ぶトルコの「危険なあそび」

 

NATOの戦略拠点として、イスラエルとイランの高まる緊張のバランスを取る役割を果たすトルコですが、最近では、ロシアからS400ミサイルを購入し、国内に配備することを決めたことが、就任以来、出しては引っ込めるトランプ大統領のNATO改造への関心と合いまって、欧州各国やトルコの出方次第では、国際安全保障上、とても大きな見直しが近々行われるかもしれません。

その可否、そして可能性を左右するのが、もう一つの懸念材料、イランをめぐる国内外の情勢です。こちらについては、5月に入ってからアメリカが各同盟国に“要請”するイラン産原油の輸入禁止措置から例外規定が外され、日本や欧州各国を含むすべての同盟国が対象になったことから、これまでに比べてよりイラン経済を苦境に陥れる状況に拍車がかかったことで、イラン国内で強硬的な意見が強まってきているという現状があります。

これまでは、ドイツやフランスなどのEU各国で、かつイランの核合意の当事国でもあったヨーロッパ諸国は、ドル決済を回避するための合弁組織を作って、原油の売買を続け、イラン経済を安定させることで、イランが再び核開発に走り、国際社会に対して挑戦的な姿勢になることを防ごうとしてきました。言い換えると、アメリカは離脱してしまったが、「イランが核合意の内容を遵守する限りは、欧州各国はイランを見捨てない」ということでした。

しかし、アメリカからの再三の要請と、5月1日以降の特例措置の延長は行わないとの姿勢に直面し、欧州各国はイラン支援のための手段を失い、結果、イラン経済は大きなブローに見舞われることになります。

『ついに、イランはまた孤立したのだ』

そうロウハニ大統領は悟ったのか、引き続き核合意への残留の方針を示しつつも、ここにきて、核開発の一部再開(特にウラン濃縮)や短距離弾道ミサイルの再配備の動きを見せるようになりました。

これは、ロウハニ大統領をはじめとする穏健派・国際協調派の弱体化を意味し、国内の政治が、最高指導者であるハーメネイ師に代表される、核合意に対決姿勢を取る対米・国際社会強硬派の主張に傾いたことを意味すると考えられます。

もし、この強硬派の流れが加速すると、世界はまたイランを一つの核とする不安定要素を抱えることになります。それは、直接的には、地域の宿敵イスラエルとの全面的な対立です。(もしかしたら、核戦力の応酬に発展するかもしれない事態です)。そして、それはイスラエルの背後にいるアメリカとの全面対決の姿勢となります。

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