軍事アナリストが気になって仕方がない産経の「ちっぽけな誤報」

 

実は、誤報はUS-2そのものではなく、その性能を紹介した新聞記事にありました。「空からの消火活動で、ヘリコプターの約7倍に当たる約15トンの水を運ぶことができるという」これが誤報なのです。

まず、比較の対象となるヘリコプターの機種が明らかになっていません。US-2が積むことのできる15トンに対して7分の1と言えば、2トンあまりでしかありません。2トンほどの水であれば、例えば静岡県が機種更新したばかりのAW-139も胴体下のベリータンクに積むことができます。

一方、ヘリコプターによる空中消火で最大の搭載能力を持っているのは、陸上自衛隊と航空自衛隊が備えているCH-47チヌークです。こちらは胴体の下にぶら下げたバケットを使いますが、陸上自衛隊の運用基準では7.5トンの水を運びます。カタログデータ的には、チヌークの機外吊り下げ能力は12トンとされています。陸上自衛隊のチヌークも、精一杯積めばバケットの限界の8トンはいけるということになります。

記事にある15トンというUS-2の搭載量のほうは間違いないと思いますが、「大型ヘリCH-47チヌークの約2倍」あるいは「小型ヘリの20倍、中型ヘリの10倍以上」と書かなければ誤報なのです。

勘違いの結果の誤報なのか、それともUS-2の性能を強調したいがために中型ヘリなどの搭載量を基準に7倍としたのか?同じUS-2のファンとして、贔屓の引き倒しにならないようにしたいものです。

「ちっぽけな誤報」のお話しでした。(小川和久)

image by: viper-zero, shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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