財務省に隠蔽の恩返しか?安倍首相が消費増税を延期できない理由

arata20190627
 

野党議員の口からはもちろんのこと、与党自民党議員からも公然と「反対」の声が上がる消費税の10%への増税。個人消費の落ち込みによる景気の悪化も必至と言われますが、それでも安倍首相の「10月敢行」の意思は固いようです。なぜ首相はここまで増税にこだわりを見せるのでしょうか。元全国紙社会部記者の新 恭さんが自身のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』で、その理由を探っています。

安倍首相が消費増税を延期できない理由

最近のテレビCMで目につくのが、経産省と独立行政法人「中小機構」による軽減税率対応レジ補助金のお知らせである。

自民党は参院選の公約に消費税の増税を明記した。6月21日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2019」も下記のように増税を前提とした内容となっている。

2019年度は、臨時・特別の措置等により、消費税率引上げ前後の需要変動を平準化、経済の回復基調に影響を及ぼさないように取り組む。

どうやら安倍首相は10%への消費税増税を延期する気がないようだ。日本経済にとって大変なことになる。

安倍首相は「もはや日本はデフレではない」といつも強調するが、実質賃金が下がり、個人消費がふるわず、異次元金融緩和の効き目がない現状を客観的に見れば、やはりデフレに違いない。

そこに、消費税を増税して、国民がますますモノやサービスを買わなくなったら、デフレの深刻化は火を見るより明らかである。

「老後2,000万円不足」問題で社会不安が広がっているさなか、消費増税の公約を掲げて選挙を戦うことになった自民党参院の改選組は危機感を募らせる。

改選組の一人、西田昌司氏は与党議員らしからぬ率直な消費増税批判を毎日新聞に寄稿した。以下はその一部だ。

2019年1~3月期の国内総生産の速報値は年率換算で2.1%増となった。しかしこれで「景気が良くなった」というのは全くの解釈違いだ。「本当にバカか」と私は言いたい。数字の中身をみると内需の最大の項目である個人消費は減っている。民間の設備投資も減っている。輸出も減っている。実質賃金がこの20年間下がり、労働分配率もアベノミクスの下で減り続けている。GDP速報値は日本がデフレ下にあることを証明している。ならば消費増税は凍結するしかない。消費増税を強行すれば間違いなく経済は悪くなる。

経済成長期なら増税分が税収のプラスになるかもしれないが、デフレのもとで強行してさらに景気を冷え込ませてはかえって税収減となる。1989年のバブル絶頂期に3%の消費税徴収を始めたが、翌年は約5兆円のプラスにとどまり、1997年に3%から5%に上げると、約4兆円も翌年の税収が減った

第二次安倍政権はデフレ脱出を掲げたにもかかわらず2014年に8%へ消費税を引き上げたため、景気に急ブレーキがかかり、2人以上世帯の実質家計消費支出は2013年の平均が363.6万円だったのに対し、18年の平均は338.7万円に落ち込んだ。

西田議員が「日本がデフレ下にある」という、安倍内閣が認めてこなかった真実を、明確に言い切った意味は大きい。増税が選挙に不利という動機から、ふだんは偏向気味の“自民党爆弾男”が一時的にせよ正直な批判者に変身したといえる。

むろん、安倍首相とて、できることなら消費税を上げたくはないに違いない。景気悪化が目に見えているのだ。アベノミクスの失敗を認めたくないから、もはやデフレではないと強弁して消費増税を強行するとしても、その先にはさらなるアベノミクス危機が待ち受けているのだ。

自民党の萩生田光一幹事長代行が語ったように、三度目の消費増税延期をぶち上げて、解散総選挙で信を問う選択肢を安倍首相も真剣に検討したことだろう。

だが、財務省主導で野田内閣時代の2012年に成立した「社会保障と税の一体改革」に関する民自公三党合意と、それに基づいて成立した法律を無視し、三たび10%への消費増税スケジュールを壊すとなれば、財務省の反発は必至だ。

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