みんな違ってみんないい。広島大阪、お好み焼きのルーツを辿る

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根強い人気を誇る庶民の味・お好み焼き。今回の無料メルマガ『おやじのための自炊講座』では著者のジミヘンさんが、知人が上梓されたというお好み焼きをテーマにした書籍を紹介しつつ、「広島お好み」に麺を入れる調理法のルーツを探ったところ神戸の新長田に辿り着いたというエピソード等を紹介しながら、お好み焼きへの謎解き愛を熱く語っています。

お好み焼き

皆さん、お元気ですか。ジミヘンです。

ツイッター経由で、この新刊本を知った。タイトルは、『熱狂のお好み焼~お好み焼ラバーのための新教科書~』。帯には「広島のお好み焼の歴史真のルーツをひもとく…」とある。早速、アマゾンへ注文を入れた。

著者のシャオヘイ氏とは、3年前に神戸で会った。新長田にある老舗のお好み焼き店を案内してほしいという依頼であった。その時、彼は広島お好み焼きをテーマにした本を出したいと語っていた。氏とは、広島へ赴任していた時に何度かメールを交換していた。インターネットの黎明期であった2000年ミレニアムの頃に、食べ歩き同好者として知り合った。

本が届いた。やや厚い新書版の書籍は、手にすっぽりと収まって、非常に読みやすい。パラパラとページを繰って、拾い読みしていった。「お好み焼のルーツは東京市」「焼きそばスタイルという傍流」「なぜお好み焼が広島名物になったのか」など、興味を引くテーマが並ぶ。

とにかく熱量がスゴイ。まさに「熱狂のお好み焼」だ。氏は5年間以上に亘って広島県内のお好みきを食べ歩き店主に取材し、その歴史と系譜を考察し続けた。その集大成がこの著作であるが、県外に住む者にとっては前半の「広島お好み焼きの生い立ちと位置づけ編が出色の出来であり、後半の広島の専門店の分類や系統などは(申し訳ないが)興味が沸かなかった。

広島お好み焼きは、「洋食焼き一銭洋食)」の発展形である。この点で、氏と一致する。東京で生まれた文字焼きをルーツとする「洋食焼き」(小麦粉の生地にネギやキャベツを重ねて焼き、ソースを掛けた重ね焼き」)が大阪・神戸・広島へ伝播する。料理は地元独自のアレンジが加えられて進化していった。平成・令和の時代まで残るのは、京都のべた焼き、大阪・岸和田の「かしみん焼き」、神戸のうす焼き、高砂の「にくてん」、赤穂の「ネギコロ」、愛媛県松山市の「三津浜焼き」、そして一大勢力を誇る広島お好み焼きなどだ。

大阪スタンダードになった「混ぜ焼きのルーツが東京発祥の風流お好み焼き」であることは明らかである。個室でアベックがお好み焼きを焼くには、焼き方が簡単な「混ぜ焼き」の方が適していた。広島お好み焼きに必ず入る中華そば(又はうどん)についての考察が面白い。ミステリー小説でも読むような粘っこい捜査が続く。広島市エリアの長老は、お好み焼きと焼きそばを偶然一緒にしたと語る(広島スタンダードスタイル)が、生地の上に焼きそばを載せる「広島オールドスタイル実は神戸エリアで生まれたモダン焼きがそのルーツだと突き止める。その謎解きのために神戸・新長田へやって来たシャオヘイ探偵を小生が案内したという訳である。そば入りの重ね焼きが県民の舌に余程合ったのだろう。この“重ね焼きモダンが現在の広島風そば肉玉」へ継承される。

テレビを見ていると、一番美味しいお好み焼きは大阪か広島かという不毛な論戦を戦わせている。それはバラエティ番組の企画(やらせ)に過ぎないのだが…。シャオヘイ氏は「広島お好み焼はキャベツ料理だ」とハッキリ言っている。生地は底にあるだけで、ほとんどはキャベツと麺と玉子からなる。私は麺料理と捉えた方が適切だと思っているが、いづれにしても「コナモン」とは言い難い。

大阪ではふっくら食感の混ぜ焼きが好まれ、神戸ではおやつのように小さなうす焼きが好まれ、そして広島では(食事として)巨大な重ね焼きが好まれたというのが事実である。一番争いなどナンセンスである。

お好み焼きに邪道なし」「お好み焼きはお好みに」「みんな違ってみんないい

これは私が5年間に亘り、ブログ連載した「関西お好み焼き総研」のスローガンだ。大衆に愛された料理だけが、後世に伝わってゆく。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 ジミヘン 【発行周期】 週刊

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