れいわ議員への「重度障がい者に政治家がつとまるか」という愚問

kawai20190807
 

先日行われた参院選で、れいわ新選組から立った障害を持つ2候補が当選、8月1日には初登院を果たしました。2人の議員に対しては障害を巡りさまざまな意見が飛び交っていますが、その状況が全く理解できないというのは健康社会学者の河合薫さん。河合さんは自身のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』にその理由を記すとともに、2人の当選を機に「障害とは何か?」を考えるようになれれば、より多くの人の可能性が広がるのではないかとしています。

※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2019年8月7日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

心のバリアフリーと合理的配慮

参院選後初の臨時国会が1日に開かれ、れいわ新選組から初当選した筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の舩後靖彦議員と、脳性まひを患う木村英子議員が初登院しました。

国会は議事堂をバリアフリーにするなど、受け入れ態勢を整備しましたが、その費用負担やお二人が重度障害者であることから、「政治家としてつとまるのか?」「逆差別ではないか」などなど、さまざまな意見が飛び交っています。

個人的には「何が問題なのか?」が全く理解できないというのが、正直なところです。日本はハード面では障害者への合理的配慮がかなり行き届いていますが、ソフト面、すなわち「私たちの心」の壁は高く、障害者へのまなざしは偏見に満ちているといっても過言ではありません。

なので今回、重度障害者のお二人が政治家として選ばれたことは画期的なこと。これをきっかけに多くの人たちの「心」が和らいでいくのではないか。ソフト面での合理的配慮が社会に広がれば、障害者も含め多様な働き方・生き方が可能になるのではないか。そう期待しているのです。

今回、奇しくもALS患者の船後さんが当選しましたが、今から2年前の2016年5月10日。衆議院の厚生労働委員会に参考人として出席する予定だったALS患者で日本ALS協会副会長の岡部宏生さんが、「答弁に時間がかかるという理由から出席を拒否されるという“事件”がありました。

「(岡部さんの健康状態を配慮し)答弁に耐えられるかどうかをおもんばかった」だの、「いいや、参考人を差し替えたのは民進党」だの、与野党は必死で言いわけをしてましたど、結局、批判が相次いだことから同月23日に岡部さんは参議院の厚生労働委員会に参考人として出席

そのときの委員会はとても美しく、岡部さんと介護者の方の間に存在する信頼感、質問する政治家たちの岡部さんへの敬意、そこにいるすべての人が、岡部さんの「内なる声」に必死に耳を傾けている様子は本当にすばらしいものでした。

いつもはヤジが飛び交い騒がしい委員会が、厳粛な空気に包まれ、温かいというかなんというか。

委員会後の記者会見で岡部さんは「突然の質問には焦りましたが、介護者の方たちのおかげできちんと答えることができました」と語っていたとおり、岡部さん自身も、配慮された環境の中で最大限に努力し能力を発揮していたのです。

おそらくあの場にいた人たちのALS患者への“まなざし”は、180度変わったに違いありません。「なんら問題ないじゃないか。なんで衆議院では拒否したんだよ」そんな思いに至った人が多かったはずです。

結局、意見陳述は予定の時間内で終了。本当に「なにひとつ問題は存在しなかったのです。

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