そもそも企業にとって最大の課題は「人材を確保し、その人材を教育し、その人材を確保し続けること」。会社は新入社員に投資し、その投資が企業を支え、企業を成長させる人材にならないことには意味がありません。
そのためには「この会社で働きたい」という強い熱意を持つ学生を採用しなければならない。ただ「大企業だから~」とか、ただ「学生に人気があるから~」とか、ただ「休みが多そうだから~」という理由ではなく、「この会社の一員として、大変なことがあっても頑張っていきたい」「この会社の一員として、自分も成長したい」という覚悟ある学生と出会うには、採用する側が汗をかくしかないのです。その努力をせずにAI予測に手を出すとは…、実に残念です。
採用する過程は、自分たちの組織に適応できる人物かどうか、相性の良い相手かどうかを見極める重要な機会であるとともに、自分たちの仕事への思い、採用する思いを学生に伝える大切な時間です。
これまで取材させていただいたり、訪問させていただいた企業の中で、規模が小さくとも、世間的に知名度が低くとも、いい製品やサービスを生み出し成長し続けている会社は、必ずと言っていいほど採用に手間をかけていました。
自分たちの思い、自分たちのやってきたこと、自分たちの会社のことを学生たちに伝えるために、自ら大学に出向き、きちんと学生と向き合う時間を大切にしていました。いいことばかりではなく、悪いことも正直に伝え、「自分たちと同じ志を持って、いばらの道を歩いていこうという意志がアナタにはありますか?」と、直接学生と向き合い問うていました。
「就職先を志願する」ということは、人生の中で最も重みのある大切な行為の1つです。たとえその先に転職することがあろうとも、人生の時間軸で、共に歩む伴侶を見つける出会いであることに変わりありません。
特に最初に就いたキャリアは、その後のキャリアに大きな影響を及ぼすため重要な道標です。それだけに採用する側が汗をかき、自分たちの言葉を直に語りかけることが大切だと思うのです。
昨今の就活狂想曲にはさまざまな角度から異議を唱えてきましたが、遂にAIに、しかも日本を代表する企業が…、本当に残念です。
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※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2019年8月14日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。