「自分らしく、自由に、豊かに」を追求できる社会に伸びる暗い影

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「豊かさ」を追求するがあまり、そこからあぶれた人々に対しては「自己責任」の一言で片付け、結果的に歪ばかりが大きくなってゆく…。このような現代社会が抱える大きな問題、解決の糸口はどこにあるのでしょうか。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者で江東区議の経験もお持ちの廣田信子さんが、「問題改善のため私たちが忘れてはならないこと」を記しています。

「知識社会化・リベラル化・グローバル化」がもたらすもの

こんにちは!廣田信子です。

産業革命がもたらした「豊かさ」が知識社会を成立させ、テクノロジーは指数関数的に進化しています。近年の遺伝子工学、AI、ロボット工学等の進化のスピードは、もう、専門家でさえついて行けないものになっています。それによって、テクノロジーは理解するものから使いこなすものに変わりました。

初期のパソコンはコンピューターオタクの人ならその仕組みを理解することができましたが、スマートフォンになると専門家ですら、どのような技術が使われているのか全てを把握することが不可能だといいます。人類が誰も全体像が把握できないのに、それぞれの分野のテクノロジーがAIによって加速度的に進化していく怖さを、もう、私たちは感じ始めています。

こうして、最先端のテクノロジーを開発する少数の知識層(シリコンバレーの起業家等)に膨大な富が集中する一方で、基礎的な技術を理解する事はもちろん使いこなすことすら困難な人たちが膨大に出てくることになりました。自分もまったくその中の一人です。

デジタル難民は高齢者だけではなく、最近ではスマホのフリック入力しかできないパソコンのキーボード入力を知らない若者が増えています。知識社会が高度化するにつれて、仕事に要求される知識のハードルが上がり、それについていけない若者が大量に存在することになり、知識格差が富の格差を過疎度的に増大させていくのです。そして、さらにAIやロボットが進化すれば平均的な知識レベルの人間の仕事はどんどんなくなっていきます

さらに、テクノロジーの進化と飽くなき豊かさの希求は、必然的に「グローバル化へと進みます。工場を人件費の安い新興国に移設したり、国内でも人件費が安い外国人労働者を雇うのが容易になりました。当然、先進国を中心に、知識社会に適応できず動労の機会を奪われる人たちが増大します。

最近の世界を覆う自国主義、右傾化は、「知識社会化・リベラル化・グローバル化への反発と考えれば理解できます。リベラル化の大潮流の中で、アメリカでは白人至上主義者が自分たちは犠牲者だと主張するようになりました。

中産階級から脱落しかける白人ブルーワーカーの自己像は、東部や西海岸のリベラリストのエリートから相手にされず、黒人や女性へのアファーマティブアクションによって自分たちが本来得られるべき職を奪われている被害者なのです。

しかし、アメリカでは、白人は黒人を差別してきた歴史があるため、アンダークラスの白人は誰からも同情されません。まさに見捨てられた人々です。仕事も家族も誇りも失った彼らには、自分が白人であると言う以外に誇れるものがありません。これが白人至上主義と呼ばれるのですが、正しくは「白人アイデンティティー主義」だといいます。

このような傾向が、すでに日本でも始まっているのです。日本人であり、男性であることは、以前は、日本社会の中でも、労働市場でもゆるぎないマジョリティだったのです。現在、40代、50代になろうとしている団塊の世代の子供たち(特に男性)は、その価値観の中で育ってきたのです。

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