障がい者の学びのために「アンカーをおろせる場所」作りの大切さ

 

この女子学生がアンカーをおろしたシャンティつくばはいつ行っても楽しくて愉快な場所だ。運動や旅行、パーティや各種体験等、行事が満載自分のやりたいことを考え、計画立てて実行できるのが特徴。中心となる船橋秀彦先生も一緒になって楽しむから面白い。

それを赤木和重・神戸大准教授は「学びほぐし(unlearn)」という概念で解説した。青年期の学びは特別支援学校からの「積み増し」の学びではない、のを前提に「学びは広い」「学びは自由だ」「学びはおおらかだ」であり、シャンティの学びであるカラオケやイベント企画、アート作品の制作やダンスなどの実践は、その一つひとつが「教育」として有効だという。

その結果、件の女子学生がシャンティという空間の中に自分の身体軸をアンカーすることが出来たのだと分析した。不安だったこの女子学生が間違いも許してもらえる中で、記憶の持続が自分の持続へとつながり、自分にとっての「手応え」をつかんだのだという。

この学びほぐしの解説で、赤木准教授は福祉型専攻科「エコール神戸」(神戸市長田区)のよしもと新喜劇の演出家による「エコール新喜劇」を引き合いに出した。

おっぱいをネタにする劇を「教育か」という議論の中、それは新たな発見であるとの認識で、「おっぱい」を見事にネタとしたことが、自分たちの自主性が認められることにつながったという。「許される」という感覚であろう。

シャンティの取組も遊びながら、発見し、のびのびと成長しているのは、各学生が「ここはいてよい場所」と安心してアンカーをおろしているから。船橋先生が学生から親近感を得ている姿勢、先生の立ち位置も見習うべきだと私は注目している。

シャローム大学校は今のところ「学問」をやろうとする学生が厳かに学問をやっているが、それはそれぞれの個性に合わすことにして、来年入学する学生によっては、自由な遊びがどんどん増える可能性もある。それはアンカーをおろしてもらうためにも重要なカリキュラムである。

image by: シャンティつくばホームページ

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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