マンションでゴミ出しなどマナー違反の住民に対し掲示される警告文は、ただ貼っただけではなかなか効果が上がるものではありません。何か他に対応策はないのでしょうか。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者でマンション管理士の廣田信子さんが、清掃員の仕事が住民の心を動かし、結果的にマンション全体のゴミ出しマナー改善に繋がった事例を紹介しています。
一流の清掃人が住民のゴミ出しマナーも変える
こんにちは!廣田信子です。
マンションコミュニティ研究会の仲間が、ステキな新聞のエッセーを紹介してくれました。「管理会社」とか「ITソリュ─ション」とか、働く個々人の顔が見えにくい話を続けて書いていて、何かが足りないように感じていたところだったので、そのエッセーが心に染み入りました。
私も、紹介せずにいられなくなりました。10月4日の産経新聞の「朝晴れエッセー」で、表題は、「一流の清掃人」です。
この投稿者の方は、戸建てからマンションに移り住んで2年、マンションでの生活は快適ではあるものの、共用スペースの汚れや、いい加減なゴミ出しが気になって、つい手を出したり、家族にこぼしたりしていたのですが…、ある日、清掃担当のSさんがやってきて、マンションが変わり始めます。
Sさんの仕事ぶりは見事で、玄関、廊下、エレベータ─の床のモップ掛けはもちろん、手すり、雨水排水溝も徹底して拭き掃除をするのです。さらに、ゴミ集積所のボックス内のゴミをきれいに整理し、ゴミが運ばれた後は、ボックス内も丁寧に拭き掃除をします。
「清掃とは、こうやるのだよ」というお手本のような仕事ぶりに、「いつもありがとうございます」と声をかけると、「玄関のガラス扉が思うようにきれいにならなくて…どうしても曇ってしまうんですよ」…と、素人には何の問題もないようなガラスの磨き具合にも満足していないようで、もっと清掃を極めようとしているのです。
そして…Sさんが来るようになって、マンション住人のゴミ出しがよくなったのです。Sさんは、自分の仕事に責任と誇りを持った、天下一品、一流の清掃人だ…と、投稿者の感謝の気持ちが書かれています。今日も快適なマンション暮らしをさせていただいて、Sさん、ありがとう…と。
こういう仕事は、自分の仕事に誇りを持った「人」にしかできません。Sさんのような方々に、マンション管理の現場は支えられている、そのことは、絶対に忘れてはならないと改めて思いました。
「自分」と向き合って目の前の仕事を全力でするSさんの生き方はほんとうに神々しいほどです。そのきれいに磨きあげられた空間には、住民に、いい加減なゴミ出しができないような気持ちにさせる、何か不思議な空気があるのでしょうね。きっと、べたべた壁に貼られた「警告文」より、人の心を動かすのだと思います。
同時に、Sさんの働きぶりに気が付いて、感謝を言葉にしている投稿者の方もすてきです。そして…管理会社もきちんとそのことを見ていて、評価してほしいな…と思いました。高い精神ステージにいるSさんは、特別、そんなことを望んでいないでしょうが、凡人の私としては、Sさんに続く人の励みになるように…と思うのです。
ステキな話を紹介していただいて、ありがとうございました。心がほっこりしました。
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