現役医師が警鐘。咳止め薬と風邪薬の依存症が拡大するニッポン

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数年前社会問題化した危険ドラッグは、取り締まり強化が功を奏し、薬物依存症の原因から姿を消したようです。しかし、それに代わるように、咳止め薬と風邪薬の乱用による依存症が急増しているという調査結果があります。メルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』の著者で現役医師の徳田先生が、依存症の原因となる成分について解説。これらの成分の含まれる薬がドラッグストアなどで簡単に手に入れられる現状に警鐘を鳴らしています。

広がる、危険な咳止め薬と風邪薬の乱用

咳止め薬と風邪薬の乱用が10代の若者に広がっています。厚生労働省の研究班が、2018年に全国の精神科医療機関約1500施設を対象に調査したところ、薬物依存症の原因で最も多いのが咳止め薬と風邪薬でした。5年前の調査で最も多かった危険ドラッグの乱用者はゼロ人であり、薬物依存の原因が危険ドラッグから咳止め薬に移行したのです。

咳止め薬と風邪薬は薬物依存症の原因のうち約40%を占めていました。続いて多かったのは、マリファナの約20%、覚せい剤が約15%、そして睡眠導入薬が約5%でした。マリファナと覚せい剤は違法薬物であるために入手が困難ですが、咳止め薬と風邪薬はドラッグストアなどで簡単に入手できる上に安価であることから近年急増しています。

取り締まりが強化された危険ドラッグの依存症が無くなったものの、日本の若者は今、咳止め薬と風邪薬の依存症リスクの危機的拡大にさらされています。社会の閉塞感が増す中で、疎外感と孤独感、生きづらさを感じている若者が薬物依存症にかかるリスクが高くなっています。未成年者のアルコールとタバコの店頭での購入が原則禁止される中で、購入可能な咳止め薬と風邪薬に流れているのです。

ジヒドロコデインはオピオイド

10代の若者の薬物依存症の原因トップとなった咳止め薬と風邪薬。特に、咳止め薬はブロン、風邪薬はパブロンゴールドです。ブロンには錠剤と液体タイプがありますが、依存症で問題となっているのは錠剤タイプです。錠剤タイプのブロンとパブロンゴールドに共通している成分は、ジヒドロコデインとメチルエフェドリンです。この両成分の依存が拡大しているのです。

ジヒドロコデインはオピオイドです。オピオイドとはオピウムのようなものという意味で、オピウムはアヘン、すなわち麻薬のことですから、オピオイドは麻薬用物質ということになります。ジヒドロコデインは20世紀初頭にドイツで初めて合成された後、その咳止め作用が確認されたので、世界中で咳止め薬の中に含まれるようになりました。

しかし、ジヒドロコデインはオピオイドであり、医療用麻薬です。オピオイド依存症は、アメリカで年間数万もの死亡者を出しています。アメリカでのオピオイド依存症の蔓延は、オキシコドンすなわち商品名オキシコンチンの依存からスタートしました。オピオイド依存症の死亡原因のほとんどが呼吸抑制です。人々は依存症によって使用量がエスカレートするために、脳内の呼吸中枢を抑制し、無呼吸状態となり死亡するのです。

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