ついでに、もう1点。自分の「嫌い」という感情を、別の言葉で言い換えるだけではなく、相手の「好きの押し売り」を、やんわりお断りする方法についても、お話ししておきましょう。
みなさん、日々、お感じかと思いますが、好き嫌いほど、人間の行動を左右する感情はないでしょう。なかでも好きという気持ちは、ポジティブでかけがえのないものであることは言うまでもありませんが、その情熱が強すぎて、こちらの意図を察知できず、あるいはあえて察知しようとせず、しつこくオススメされることもありますよね。
その際には、ピシャリとお断りできる表現も必要になってきますが、そういうときでも、極力、相手を刺激したくありませんよね。好きという感情や、その好きという感情を否定された怒りは、時として人の理性を失わせるものです。
会話において、しつこいオススメなどを丁重にお断りする、ポイントは2点。
- 相手の勧めてくる物事、それ自体を否定してはダメ
- 自分の時間、お金、労力を理由にする
それ自体を否定するのが危険なことは、前述のとおり。時間、お金、労力というのは、人間にとって、限りある重要な資源だからです。これを理由にされると、他人の入り込む余地が無くなり、ぐうの音も出なくなります。お金がないので、と言われれば、貸します、あげます、とまでは、なかなか言えないですよね。
さらに、やんわりお断りする効果を高める技術としては、
- しつこく勧められているものと別ジャンルの理由で話題を転換する
- 勉強や、病気の治療、努力していることなどの大義名分を入れる
- 相手が知らなそうなテーマで話す
例えば、「今、〇〇の勉強に熱中していて(別ジャンル)、動画で講義を受けているんですけど(努力、大義名分)、××の課題がチョー難しくて、よそごとをしている余裕が全然ないので(時間と労力、限りある資源)、遠慮しておきますねー。それはそうと、××って、こうなんですよ…(相手が知らなそうなテーマ)」などなど。だいぶ、相手の攻勢の矛先も、散らせますよね。
もっとも、相手から悪意が感じられ、それに対して悪意をもって打ち負かしたいときには、相手の勧めてくる物事それ自体の価値を貶めるのが、最大の逆襲になるのですが、なかでも効果的なのは、その最大の価値である要素に対して、「嫌い」と言うことです。
実際にそう言われてみればわかると思いますが、「嫌い」と言われたら、もうどうしようもないですよね。それがその人の価値観なのですから、他人が動かしようもない。反撃する言葉の全てが、負け犬の遠吠えみたいに、空虚と化すのです。
だからこそ、普段はできるだけ言い換えよう。そういう話です。話が振り出しに戻りましたので、今回はこのへんで。
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