8050問題の入口を見た。高齢の親と引きこもりの子の住む家の未来

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 80代の親を50代の子供が支えるという生活、この社会問題は通称「8050問題」と呼ばれていますが「この問題の入り口を見た」と話すのはマンション管理士の廣田信子さん。廣田さんは今回、自身の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』にて、マンション管理員の方々から聞いた8050問題に近しい事例を紹介しています。

「8050問題」の入口を見た

こんにちは!廣田信子です。

先日、管理員の方たちに、認知症、孤独死防止の対策についてお話ししたときのことです。皆さん、それぞれに、対応の経験をお持ちでしたが、その中で、こういうこともあるんだ…というお話がありました。

高経年の大団地で起こったことです。トイレに上の階からの漏水があるけど、上の住戸がずっと留守で困っている…との連絡が。管理員さんが電話をしても出ませんし、何度訪ねても留守です。住民の方によると、夜になっても明かりがつかないから住んでいないはずだ…と。

名簿では、高齢のご夫妻と娘さんが同居していることになっています。緊急連絡先になっている親類の方のところに電話をすると、少し事情がわかりました。

奥様は亡くなられて、今は、90歳代のご主人と、60歳代の娘さんが暮らしているはずだと…。で、その90歳代のご主人は、入院中。娘さんは、少し精神障害があって、ずっと自宅にいるはずだ…と。で、その娘さんのいとこに当たる緊急連絡先の相手は、うちも親も叔母も亡くなって、つきあいも無いので、もう連絡しないでくれ…と。

行政に連絡をすると、精神障害がある娘さんの存在は把握していましたが、今、その娘さんがどういう状態かは知らないのです。お父さんの病院の方も、見舞いに来たことは無いというし、ほとんど、自宅から出たことがない娘さんが、今どこにいるのか…夜も明かりがつかず、水漏れを放置している状況から、みんな、最悪のことも頭をよぎります。

警察に連絡しようか…というような話になっていたときに、近隣の方が、夜中に買い物から帰ってくるその住戸の住民らしい人を、見たことがある…と。えっひょっとして住んでいる?ということで、様子をみると、確かにその兆候が。

で、管理員さんが行っても、ご近所の方が行っても、行政が訪ねても、決して開かなかったドアが、あるとき、開いたのです。水道の修理の方が、「修理に来ました」と訪ねたときです。ダメ元で、管理事務室から依頼をしてみたのです。

やはり、水道管の継ぎ手からの漏水には、助けの求め方がわからない娘さんも困っていて、人と接したくないとも言っていられなかったのです。で、その修理の方からの情報で、その娘さんがどんな暮らしをしているかが、少しわかりました。

なぜ、明かりがつかなかったのかは、電気料金未納で止められていたのです。電気もガスも3ヶ月止まっている中で、密かに一人で生活していたらしいのです。水道だけは止められておらず、だから、漏水が発生して、娘さんの窮状が発見できたのです。

あとは、行政が対応することになると思いますが、管理員さんが言います。漏水がなければ、誰も気づかず、あのまま一人で暗い暖房も無い部屋で、一人でお父さんが帰ってくるのを待っていたんだろうか。もし、お父さんが帰らず、手元にある現金も底をついたらどうしたんだろう。そう考えると、あの漏水は、それを知らせるために発生したんじゃないかと…。

何だか私もそんな気がしました。

気づいてもらうきっかけがなく、高齢の親の保護が受けられなくなった後、困っている状況を誰にも知られずにいる…そんな例が、たくさんあるんだろうと改めて思いました。買い物に一人で行けるぐらいの生活能力があると、周りは本当に気づきにくいと思います。80代の親と50代の引きこもりの子供の生活破たんが心配される「8050問題」の入口を見た気がしました。

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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