「SNSなしには生きていけない世の中だからこそ知っておきたい、ネット炎上のメカニズムと回避策」という本である。ツイッターは現在4,000万人以上、インスタグラムも3,000万人程度のアクティブユーザーがいる。彼らは自分とは何者であるかを、家の外に出て拡声器を使って公表しているに等しい。匿名だから何を言っても大丈夫と信じてバカやってる人も、特定されて痛い目に遭う。
受け手が二極化している。まずは炎上しないために、要注意の話題は避けるという手がある。センシティブなものは持ち出さなければいい。貧富の格差、性差、LGBT、女性への性被害、マイノリティへの差別、美醜、他者への迷惑がかかることを想像させること、世代論、倫理観、安全保障問題・労働問題……などの政治的論点は避ける。ネットは表現の自由が保障された環境、ではない。
そうか、ネットの社会は著しく不寛容なのだ。あぶないあぶない。それでも、どうしてもなにか言いたい時は、表現される側や読み手に対する慎重な配慮が求められる。なぜそう思ったのか理由を書く、誰が受け取るかを意識する、投稿するまでに間を空ける。思いついたことを即投稿なんて、危険極まりない。ネット上のたった一瞬の判断ミスが、現実世界で大きな痛手につながって……。
ネットに投稿する前に、身の周りの人に見てもらうのも、炎上を避けるひとつの方法だ。自分の投稿を客観視できる。覚悟を問われる機会を得ることができる。また、企業の広告宣伝とSNSは相性がいいが、適切な運用とリスク管理が求められている。ツィッターアカウントを広報担当者が一人で管理する、などというのは非常に危険である。危機管理意識が低すぎると言わざるを得ない。
〈はあちゅう〉というブロガーの先駆け・ネット時代の新たな作家を標榜する美人が著者と対談。ブログが日本に入ってきた2003年の翌年からブログを開始。当初はただの日記を書いていただけの“自分が見つけた居場所”を「有名人だからとこれくらいは我慢しろ」と荒らされ続けた恐怖と、精神的苦痛を語る。
さて、不幸にも自分のSNSが炎上してしまったらどうればいいのか?攻撃側は被害者が知られたくない、明らかにしたくない、弱いところを狙ってくる。まず第一に、次の炎上の燃料となるネタを与えないこと。無視する。じっと黙って嵐が通り過ぎるのを待つ。これがもっとも現実的で効果のある対応策だ。炎上させる相手と同じ土俵に上がらないように気をつける、ということだ。
ひどい誹謗中傷が続いたり、プライベートを盗撮されたり、居住地が明示されたり、学校や勤務先、両親や家族、恋人の情報が晒されたり、明かなプライバシー侵害が行われたら警察へ。「自分が被害を受けたという証拠」を提示し相談する。著者のようなネットの人権に明るい弁護士に相談も。費用がかかるが。
一般人(私人)の場合の対応例を示す。反論をしないこと。アカウントを削除してSNSから存在を消す。学校や勤務先に炎上している事実と現状を説明し、自分に非があるならその旨をきちんと伝えて、対応をお願いする。炎上で実害を蒙ったら、著者のような弁護士に相談する。この本、装幀はヘボいが内容はしっかりしてる。なにかと軽率なわたしは、SNSには絶対に近寄らない。
編集長 柴田忠男
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