マンション管理会社を対象に最近実施したアンケートで、「マンション管理を辞退した経験がある」と回答した社が70%以上もあったことが明らかになりました。これを受け、マンション管理士の廣田信子さんは無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』で、当アンケート結果をさらに分析し、管理会社へのコンプライアンスやカスハラに抵触する不合理な要求が目立つとした上で、管理組合側も言動を再点検すべきと指摘しています。
「管理組合の不合理な要求」が契約辞退理由のトップ
こんにちは!廣田信子です。
人手不足、働き方改革、最低賃金上昇等により、採算がとれなくなった管理会社から契約辞退があることが話題になっていますが、マンション管理新聞社が管理会社30社に行ったアンケート結果が、発表されています(10月25日号)。それによると、73.3%、約3/4の管理会社が管理組合に契約辞退などの措置を取ることがあると答えています。
契約辞退の理由で一番多かったのは、「管理組合の要求・注文が不合理」で、86.4%がこれを挙げています。
「採算が取れない」68.2%
「人手不足」22.7%
を大きく上回っているのです。複数回答なので、実際は、「管理組合の要求・注文が不合理」で、しかも、「採算が取れない」というように、複合的な判断になっていると思います。
どんな点が「不合理」と判断したかを聞くと、「コンプライアンスに関わる事項を要求された」とする回答が多かったのです。これは、私が実際に管理会社の方から聞く話と合致しています。
さらに、どんな「コンプライアンスに関わる要求」があったかを聞くと、
- 委託費を下げるため法定点検を省くことを求められる
- 契約書に押印しない
- 管理組合が行おうとしていることに法的な問題があることを理事会で指摘したが、聞かなかったことにしたいと議事録への記録を拒否された
等が上がっています。その他の契約辞退の理由としては、「契約上の無理難題」として、
- 契約にない事項を要求
- 根拠のない減額要求
- 管理会社が行うべきではない事項の要求
「カスタマーハラスメント」として、
- 営業時間外の長時間の電話
- 脅迫的な言葉、どう喝、呼び出し
- 管理会社やフロントが気に入らないと言って、管理会社の業務遂行を妨げる
- フロント、社員に高圧的な発言が繰り返される
「安全性の維持に責任が持てない」として
- 修繕積立金の値上げ承認が得られず修繕積立金不足で老朽化に対する措置を取れない
等が上がっています。管理会社から見た理由なので、管理組合側の問題点が強調されている部分が多少あることを割り引いて考えても、「管理組合の要求・注文が不合理」が契約辞退の一番の理由になっていることは、管理組合の側もしっかり受け止める必要があると思います。
特に「カスタマーハラスメント」は、管理組合としても、そんなことがないよう特に役員には徹底する必要があると思います。一見、温厚そうな理事長が、管理会社の人に対しては、別人のように高圧的な発言をするのに、驚くことがあります。そんなことは、管理組合にとって何の得もなく、場合によっては、契約辞退等のマイナスを招くことにもなりかねないのです。
また、今後は、修繕積立金の値上げができず、安全性確保の修繕できないために、管理会社が契約辞退するケースも増えてくるのではないかと思います。修繕をしていくのに必要な資金を確保する合意形成ができないマンションは、管理会社から見捨てられることもあるのです。管理組合と管理会社との関係も、より対等な契約関係の時代に入ったと感じます。
そして、コンプライアンスは、管理会社に求めるだけでなく、管理組合にも求められるのです。
「お客様は神様」の時代を引きずっている人がいないか点検が必要です。
image by: Shutterstock.com