「誰にも負けない努力をする」と口にする人間は数多いますが、具体的にはどのような心構えが必要となってくるのでしょうか。今回の無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、ブラジルで「バナナ王」と呼ばれる山田勇次さんが、京セラ創業者の稲盛和夫氏による勉強会「盛和塾」での学びをいかに活かしたかについて語られています。
「バナナ王」を支えた稲盛哲学の教え
ブラジルの広大な土地で大規模なバナナ農園を経営している山田勇次さん。いまでこそ「バナナ王」と称されるほどの成功を収められていますが、今日に至るまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。
幾多の困難を乗り越え、見事に成功を掴まれた山田さんの支えになったという教えに学びます。
気韻生動 山田勇次(ブラスニカ会長)
──困難に臆することなく前進を続けられた要因は何でしょうか。
山田 「僕は気が弱いほうだから、何事も問題が大きくならないうちに手を打ってきたのがよかったと思います。だけど、天候や政治などいろんな不安定要素があるし、何百人にも膨れ上がった従業員への責任を考えると、いつも不安でしかたがありませんでした。
そんな折に、京セラを創業された稲盛和夫さんに学ぶ経営の勉強会『盛和塾』がサンパウロにも開塾したという記事を新聞で見ましてね。バスで18時間もかけて参加したんですが、会場はサンパウロでも一番いい通りにあるし、皆さん背広にネクタイできちっと正装している。自己紹介をするように言われたんですが、気後れしてまともに話もできないんですよ。
これはとても自分のような者の来る所じゃないと思いながら帰ったんですが、その時入手した稲盛塾長の本やテープを確認してみたら、経営する者に不安や危機感は付きものだと説かれていてハッとしましてね。
さらに繙いていくと、自分が求めていた答えが、易しい言葉ですべて説かれている。とても感動して、もう恥をかいても構わないと肚を括り、毎月塾に通って稲盛哲学の勉強を続けたんです」
──どんな教えが力になりましたか。
山田 「誰にも負けない努力をするという教えがあります。最初に読んだ時はショックでした。自分にできるだろうかって。でもよく考えたら、労働で走り回ることばかりが努力じゃない。自分は経営者として寝ても覚めても事業のことを考えている。これが誰にも負けない努力ではないかと思ったら自信が湧いてきました。
燃える闘魂というのも好きですね。やっぱり人間、それだけの気持ちにならないと事は成せません。
従業員に話す時もそうです。自分に十分な熱意と真剣さがないと、何も伝わらない。どれくらい熱い思いを語れるかが重要なんです。
そうした教えを真剣に実践した甲斐もあって、業績は大きく拡大し、バナナをはじめとする農産物の出荷数は年間8万トン、従業員は2,000名まで拡大しました。
ブラジルでは、従業員を正規雇用すると保険や税金がたくさんかかるので、農園ではどこも敬遠したがるんですが、うちは100%正規雇用にしてきました。
ですから就職希望者も後を絶たなくて、いまではブラスニカに職を得ることが市民のステータスになっているんです」
『致知』のキーワード
- 誰にも負けない努力をする
- 自分に十分な熱意と真剣さがないと、何も伝わらない
image by: Shutterstock.com