失われた30年から脱却。日本が再び「国営化」に舵を切るべき理由

 

長期目線での研究投資を国が行う

ここからはそれを基に考えるが、この余剰な資金を使えるのは、国しかないということの意味は、利益を出すことを至上にする民間会社では、長期目線での投資ができない

その上、日本企業は、国内市場が小さいので、売上高も低く、技術投資してもGAFAに負けると見ているので、技術投資もしない。Lineとyahooが統合するが、売上高ではAmazonの1/10以下であり、AI技術でも投資額が違い過ぎである。

このため、民間企業ができない長期目線での技術研究投資を、国が行う必要になっている。昔は、国有企業の電電公社の通研や国鉄の技術研究所があり、そこで世界的な研究を行って、新幹線や光ファイバー、電子デバイスを生み出したのである。

この国有企業を民営化したことで、NTTの研究開発投資が大きく減速して、NECや富士通などの通信機企業の業績がダメになり、新製品もでなくなってしまい、中国と韓国の製品に負けることになったのである。

電子デバイスなどの成果は家電メーカーにも良い影響があり、世界的な日本企業が輩出したのであるが、その企業も製造業では衰退している。

逆に、国鉄は、赤字部分を切り捨てて、JR東海だけが大儲けすることで、リニアモーターカーを開発できた。JR東海と競合する企業はないことで、鉄道技術は日本がまだ先頭にいるのだ。こちらは、赤字を切り捨てたことで、巨額の研究開発投資ができているので、日立などが世界へ進出して、世界の先端企業になっている。

というように、国が、長期国債の金利以上の効果がありそうな研究技術投資を行うことと、日銀のETF買いで大中企業が国有化になることで、複数の同業企業を世界で戦えるように合併したり、もしくは企業連合にして、そこに研究開発の投資をおこなうことだ。

その見返りは、業績向上による配当金と税金があることで、国は、投資を回収できることになる。民間企業のような短期志向ではないので、基礎研究分野など長期目線の研究開発もできることになる。

日本が日銀ETF買いによる企業の国有化で社会主義的になるのは、中国みたいな独裁型国家資本主義に対抗するにも必要であり、資本主義が行き詰まっている現状や投資の観点からも合理的であることになる。

というように、マルクスの資本主義が行き詰まると社会主義なるという言葉が、真実の可能性があると思い始めている。議会制民主主義の下での個人の自由を保証した国家資本主義、または社会主義は、ありかもしれないとリチャード・クー氏の講演を聞いて思った。

欧州の民主社会主義は中途半端で、まだ、資本主義が行き詰まっていないことで、社会主義の利点が出ないのかなと思う。その点、日本は資本主義が行き詰まっているので、変革のチャンスが来ているように感じる。

しかし、野党は社会変革より、不祥事を大事にしているので、知らぬ間に社会が変わることになる。野党は、気が付いていなく、かつアイデアがないので、それでよいのかという議論があるが、そうなりそうである。このため、国民は知らぬ間に、社会が大きく変革していることになる。

中国・韓国は日本の真似

中国が米国の先端技術に追いつき、追い越す勢いなのは、国が国有企業に、技術開発費を援助して、研究者を米国から引き抜き、その研究者に、米国に居る時より2倍から3倍の賃金を払うからである。

韓国も同じようにして、日本の技術を奪い取っている。この根本にあるのは、戦後、日本が国有企業を優遇して、研究開発費を大量に投入したことでできたことを真似したためである。

逆に、日本は、それを米国との貿易摩擦で、国有企業を民営化して潰したことで、研究開発費を投資できなくなったことで、日本は「失われた30年」になったのである。

この「失われた30年」を抜け出すためには、長期目線で研究開発費を投入するしかなく、国しかできないことである。民間企業は、利益を出すことが必要であり、長期目線の視野を持てない。

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