3年で参拝者倍増。築地本願寺の大改革に学ぶ、顧客ニーズの掴み方

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「売上げが落ちている」と内心焦るも、現在抱えているお客様を失う恐怖等で、変革に踏み切れない経営者が多いのも事実。いったいどうすれば、失敗しない「店舗改革」が行えるのでしょうか。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では経営コンサルタントの梅本泰則さんが、「よそ者の視点」を生かし構造改革に成功した築地本願寺の事例から得られるヒントを紹介しています。

スポーツショップの参考になるお寺の話

11月28日放送の『カンブリア宮殿』で、「築地本願寺」が取り上げられました。400年の歴史を持つ寺院の大改革のモノガタリです。この事例の中に、スポーツショップが参考にできることがありました。どんなことが参考になったでしょうか。

築地本願寺の改革に当たったのは宗務長(しゅうむちょう)の安永雄玄氏。「宗務長」とは、寺院の代表者のことです。

この安永氏の経歴が変わっています。僧侶になったのが50歳の時です。それまでは銀行マンやヘッドハンター会社の経営者として活躍。ビジネススクールの講師もしていました。2015年に請われて築地本願寺の宗務長になります。いわゆる「よそ者」です。

宗教界に入った安永氏は、その古いしきたりやビジネスモデルに疑問を持ちます。しかも全国のお寺の将来は、危機に面しているようです。ある調査によれば、現在お寺の数は77,000ありますが、今後20年で3割は消えるとされています。その大きな要因は、

  • 檀家制度の崩壊
  • 核家族化
  • 人口の減少

です。スポーツ業界で、学校の減少や、地域の人口減少がもたらしている現象とよく似ています。しかも、お寺の収入が年間300万円にも届かないところが半分近くあるとのこと。そうした状況の中で、安永氏は3年間の改革によって、参拝者を倍増させることができました。いったい、どんな改革をしたのでしょう。

その方法の中には、あなたのお店でも応用できることがありそうです。

改革の方法

まず、安永氏は僧侶たちの意識改革から始めます。「どんなお寺でありたいか」という質問を投げかけることが入り口でした。さすが、ビジネスを経験してきただけのことはあります。組織を改革するには、ビジョンや方向性を皆で共有することが重要です。お坊さんたちは、今までそのようなことを真剣に聞かれたことはなかったでしょう。

実は、スポーツショップにとって、この質問は本当に大切です。「どんなお店でありたいか」、ぜひもう一度この質問に対する答えを考えてみてください。そこが改革の第一歩になります。

次に安永氏が行ったのは、収益構造の改革です。通常、お寺の収入はお布施や檀家からの寄付に頼っています。不動産や学校経営などを行っているお寺もありますが、そんな収入があるお寺ばかりではありません。ですから、いかに檀家を増やすかということが大きなテーマです。

ところが、世の中は檀家制度が続かない時代になっています。大事な収入基盤を失いつつあるのです。スポーツショップで言えば、学生の数が減ったり、自治体の予算が減ってきていることに当たります。

そこで安永氏は、檀家制度に頼らない方法を考えました。地域の住民全員をターゲットにしたのです。その結果考えられたのが「合同墓」。宗派を問わずお墓が出来るようにしました。しかも、30万円からと、実に手ごろな価格です。現在、合同墓の予約は7,000人を超えているとのこと。

これはスポーツショップに当てはめると、取り扱い競技を増やすということではありません。お客様をスポーツ選手だけに限定しないということです。そのスポーツ選手周辺の人たち、例えば家族、応援者、観客などもお客様にするということではないでしょうか。

そして、安永氏の改革には、古参の僧侶から「寺はお金儲けをするところではない」と反対があったそうです。当然ですね。長いこと同じ方法で運営されてきたのですから、そうは簡単に考え方は変えられません。

スポーツショップでも同じようなことが言えます。今までのやり方を変えるというのは、自分たちのやってきたことを否定することになると思ってしまいがちです。それが時代の変化への対応を遅らせます。

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