なぜ大半の投資家は、今までテスラ株を買おうともしなかったのか

 

そんな企業を見出すには、上に書いたような手法ではなく、業界全体を網羅的に見て、そこでどんな変化が起ころうとしているか(もしくは、起きるべきか)を自分なりに考えた上で、そこに向けてまっしぐっらに進む新参企業を見出して投資する必要があります。

もちろん、その「大きな変化」の見立てが間違っているケースもあるし、それが間違っていなくても、そこに誕生した新参企業が、資金不足で倒産してしまったりする可能性も十分にあるので、どうしてもハイリスク・ハイリターンな投資にはなってしまうので、注意が必要です。

また、その大きな変化に多くの人の期待が集まった結果、株価が異常に高くなってしまうケースもあるので要注意です(2000年前後のインターネット・バブルが良い例です)。

これから起ころうとしている変化の一つが、ギグ・エコノミーと呼ばれる労働市場の大きな変化です。サービス業を運営する企業が、(労働者を直接雇う代わりに)一人一人の労働者が個人事業主として提供するサービスを、テクノロジーの力を使って一つのサービスとして束ねて提供する、というビジネス手法です。

代表的なのが、カー・シェアリングのUberとLyftです。日本ではタクシー業界が手厚く保護されているため、全くビジネスになっていませんが、米国ではタクシーだけでなく、レンタカーや自家用車を脅かす存在にまで成長しています。

だからと言って、UberやLyftが、10年後にAppleやAmazonのような会社になっている保証がないところが難しいのですが、少なくともレンタカーやタクシー業界の会社よりもはるかに魅力的です。ポートフォリオの一部として、組み込んでも悪くないと思います(私自身は、Lyftの株を少しだけ持っていますが、現時点では原価割れしています)。

同じく「起こるべき大きな変化」の一つとして私が注目しているのが、人工肉・培養肉の業界です。畜産業が環境に大きな負荷をかけていることは既に知られており、地球温暖化が人類全体にとって大きな課題であることが明らかになるにつれ、「環境負荷の少ない食材」を選ぶ人が増えるだろうことは、(少なくとも、私には)火を見るよりも明らかです。

そう考えると、人工肉や培養肉を作る会社が、今度伸びる事は明らかで、既に上場しているBeyond Meat、および、間も無く上場すると言われているImpossible Foodsなどは注目に値すると思います。

こんな投資手法を一言で表す言葉が欲しいのですが、なかなか良いものが思いつきません。「Value Migration 投資」は意味的には悪くないのですが、どうもしっくり来ません。良い言葉を思いついたら連絡いただけると助かります。

image by: Vitaliy Karimov / Shutterstock.com

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マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。IT業界から日本の原発問題まで、感情論を排した冷静な筆致で綴られるメルマガは必読。

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