新型肺炎から住民を守る術は?マンションの「パンデミック対策」

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WHOが緊急事態を宣言し、我が国でも指定感染症に定められた新型肺炎ですが、残念ながら日本社会一般にはこうした「感染症への具体的対策」が浸透していないのが現状です。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者でマンション管理士の廣田信子さんが、とあるマンションで作成された「パンデミック対策」を紹介し、住民が実践しやすい現実的な危機管理マニュアルについて考察しています。

マンションでの「パンデミック対策」って?

こんにちは!廣田信子です。

1月28日の閣議で、新型コロナウイルスによる肺炎を「指定感染症」に指定する方針が決まりました。「指定感染症」となると、患者の強制的な入院や就業制限などの措置が可能となります。WHO(世界保健機構)も、ようやく、新型コロナウイルスについて、「国際的な公衆衛生上の緊急事態」を宣言ました。

実は、私は、この3日間、以前に頂いた、マンションでの「パンデミック対策マニュアル」を探していました。私が知る限りでは、唯一の「パンデミック対策マニュアル」です。確か15年ほど前のこと。大規模マンションの防災委員長さんが、力作の「危機管理マニュアル」を届けてくれました。

そのマニュアルには、様々な危機への対策が記されていて、最初が「パンデミック対策」でした。「地震対策」より先に、「パンデミック対策」があったことが印象に残っています。その冊子が、どこかに保存してあるのでは…と思い当たるところを見てみましたが、残念ながら見つかりませんでした。その方は、自治体で「パンデミック対策マニュアル」を作った経験があり、その知見を活かして作られていて、何段階かのフェーズに分かれた力作でした。マンションでも「パンデミック対策」が必要だと力説されていたのを覚えています。

15年前を思い起こしてみると…阪神淡路大震災の強烈な記憶が少し落ち着き、2002年~2003年のSARSの流行が衝撃的で、「パンデミック対策」が叫ばれていた時期だったと思います。ウィキペディアによると、「パンデミック(pandemic)」とは、

ある病気(感染症)が国中あるいは世界中で流行すること。ある感染症(特に伝染病)の(顕著な感染や死亡被害が著しい事態を想定した)世界的な流行。

とあります。ただ、私の印象記憶で申し訳ないのですが、そのマニュアルは立派だけど、強制力がない管理組合がこれを行うのは無理じゃないかな…というものでした。

一方、ここ数年、毎年、インフルエンザが大流行します。ノロウイルスが大流行の年もありました。人の移動が世界レベルで大規模になり、今年は、季節が反対の南半球で流行したインフルエンザが旅行客によって持ち込まれたためか、例年にはない早い時期からインフルエンザが流行しました。

実は、インフルエンザ対策に関して、マンションの住民の方から、マンション内で咳エチケット(エチケットマスク着用)を徹底させられないか…と昨年相談がありました。エレベーター内で明らかに熱がありそうな子供が咳をしているのに、マスクをしていない。母親は、咳をするときに「お口を押させて」というが、効果があるとは思えないし、その口を押えた手で、エレべーターの操作盤を触っている。こういうことをやめさせることができないのか…と。

私は、この場面が目に浮かぶようでした。急に発熱したと保育園からの呼び出しで駆け付けて、子供のマスクを持参していなかった方の事情も、また、子供がインフルになったら、5日は仕事を休まなければならない、なんとか、今はインフルにならないで…と祈りながら細心の注意をして生活している方の気持ちも、想像できます。3歳までぐらいは、病気で機嫌の悪い子供にマスクをさせるもたいへんです。言うことを聞かなくて親は泣きたい気分になることも。で、結局、防ぎたい側がマスクで防御して、除菌シートを持ち歩いて、子供の手をまめにふく…ということしかないかな…という話になりました。

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