では、別な例も見てみましょう。
「申し訳ありませんが、来週の金曜日に休んでも(あなたは)ご迷惑にはなりませんでしょうか?」
いかがでしょうか?こちらは主語が「あなた」なんです。つまり、上司の立場になってお願いをしているってことですね。なので、上司としては主語を変換して考えるという手間隙という苦痛を感じないので、スムーズに「YES」に誘導されやすくなるということなのですが…、伝わりますか?
さらには、上司の立場としては、ここで「迷惑だ」といってしまうと、上司のプライドに関わることになるので、その苦痛を避けるためには、やはり「YES」と言うのが自然に快楽と思えるわけです。つまり頼んだ際にYESを引き出しやすくするポイントは「あなた」を主語にするということです。
もう一つ例をあげましょう。例えば、誰かをデートに誘いたいとします。その際、「食べログですっごい高評価の美味しい焼肉屋さんがあるんだけど、帰りにどう?」と伝えた場合はどうでしょうか?
これに主語を入れ直してみると「食べログですっごい高評価の美味しい(と僕が判断した)焼肉屋さんがあるんだけど、帰りにどう?」ということで、主語は「私」なわけです。こんなふうに誘われた相手は、頭の中で
- 食べログでは高評価みたいだけど、でも私は気にいるかしら?
- そもそも高評価って、味だけ?雰囲気は?値段は?
- 場所はどこらへんなのかしら?電車で行くの?それとも?
などと、色々と考えるという苦痛を強いられます。すると苦痛を避けたくなるので、あれこれと「行かない理由」の方が反射的に頭に浮かんだりします。なので、残念な結末になりやすいわけです。
では、こう言ったらどうでしょうか?
「食べログですっごい高評価の美味しい焼肉屋さんがあるんだけど、会社から一駅だし、雰囲気がよくてSNS映えする割に値段がリーズナブルらしいんだ。なので君は気に入ってくれると思うんだけど、帰りに軽く一杯どう?」」
こちらは、先ほどとは違って主語は「あなた」ですね。かつ、相手の立場に立って先回りして疑問に答えているので、スムーズに「YES」に誘導できます。なんとなく、わかってきましたか?
これは、例えば相手を褒める際にも有効です。
例えば、「仕事が早くてとても助かるよ」と相手に言うよりも、「君は(○○さんは)仕事が早いね。おかげでとても助かるよ」と伝えた方が、相手に刺さりやすいわけです。
これ、研修の仕事をしているとよくわかります。例えば、受講者の方から質問をいただいた際に、「あ、今のはいい質問ですね^_^」と伝えるだけも相手は喜ぶのですが、「○○さんは、いい質問をしますね^_^」と、名前をつけて伝えるだけ、その喜び方は全く変わります。
日本語って、主語をはっきりさせなくても伝わるので、相手に発してる内容が「自分視点」なのか「相手視点」なのかも気付かないし、そのせいでコミュニケーションが上手くいかないことにも気付かずに、対人関係で余計なトラブルを抱えてしまうなんてことは少なくありません。
頼み事をする際には、主語を「あなた(相手)」にしながら、相手に負荷をかけないようなコミュニケーションを意識すると、頼み事が成功する可能性がグンとアップすると思いますよ~。
image by: Shutterstock.com