米の新型コロナ対策は「日本の後追い」か?在米邦人が明かす現状

 

まず、インフルエンザと同じように人類と共存するかというと、例えばですが現時点までの数字で見てみますと、

インフル(70歳代以上の高齢者の場合)

 

日本…重症化率0.07%、死亡率0.03%(厚生労働省の資料による)

新型コロナの死亡率

 

イタリア…4.96%

米国………4.03%

中国………3.83%

 

韓国………0.68%

ということで、今回の新型コロナの死亡率は、インフルと比較して非常に悪い数字となっています。ですが問題は、そう単純ではありません。

  • 検査を増やして母数を上げると死亡率は減る(韓国の場合)
  • 検査体制が追いつかないと、死亡者の発見が先行して率が上がる(アメリカの場合)

という具合に、数字にバラツキがあるわけです。つまり、本当の感染者数が把握できて、死亡数を正しく割り算できればいいのですが、現在は分からない、つまりどの程度危険なのか分からない危険な状態ということが言えます。

次に厄介なのは、潜伏期間の問題です。通常インフルの場合は3から4日、最長で7日程度と言われていますが、仮にこの新型コロナの場合に当初から言われているように14日あるとすると、非常に面倒です。

また、無発症の感染者が感染を拡大するという問題もあります。インフルの場合も無発症者が感染を広める現象は知られていますが、あくまで仮ですが、「インフルより重症化率が高く、死亡率も高く、その一方で潜伏期間が長く、潜伏期間中の感染拡大もあり、無発症の感染者も感染を拡大する」ということが確定するとしたら、これは厄介だということは言えそうです。

問題は、そうした確定をさせるためには、相当数の検査が必要であり、その際に「猛烈な規模の数字」が出てしまうと、社会的なスローダウンがもっとひどくなる危険があるわけです。

もう1つの問題は、ウィルスによる疾病のメカニズムがまだ良く見えていないということです。肺炎になった場合の影に特徴があるとか、髄膜炎の症例があるとか、排泄物にもウィルスがあるとか、とにかく人体において、このウィルスがどのような活動をするのか、まだ十分に解明されていません。勿論、全世界の研究者が必死になって調べているので、時間の問題と思われますが、とにかく待たねばならないということだと思います。

その上で、薬剤の問題があります。このウィルスに対する免疫のメカニズムを調べて、予防薬と治療薬を開発するということでも、全世界の製薬会社が今現在猛烈なスピードで取り組んでいるわけですが、こちらのメドがどうかということは重要です。

整理しますと、

  • 症例を重ねることで「どんな病気なのか?治療法はどうか?」という理解と技術が進むこと。その結果として、人類としてこの疾病について「質的な」理解が確定すること
  • 大規模な検査を経て、無発症者からの感染、潜伏期間、重症化率、致死率などのデータが固まり、人類として「量的に」この疾病の理解が確定すること
  • 同時に、予防薬と治療薬が開発・実用化されて、全世界規模としてニーズに見合う供給がされること

この3つが完了すれば、このウィルスと人類は共存できるのではないかと思います。その場合ですが、インフルよりは脅威が大きいとなった場合には、予防薬の投与を危険性を持ったグループには必須として課するとか、流行時には社会的な規制を発動するといった強い対応を日常的に取る必要が出てくる可能性もあるかもしれません。

問題は時間です。諸説ありますが、SARSのように初夏になると弱体化して、同時に完全に追跡と封じ込めができるという可能性は日に日に遠ざかっているようにも思います。

image by: Shutterstock.com

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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