パンデミックで変わる世界には、どんな未来が待っているのか?

 

新型コロナで風向きが変わった米イラン関係

世界におけるゲームの流れを変えたのが、今週発表されたTokyo 2020の1年程度の延期決定でしょう。日本政府として、COVID-19の封じ込めに全力を尽くすとの姿勢を示すことが出来たのは評価できますが、COVID-19への対策にかかるコストに加え、オリパラのリスケが生む新たなコストはまだ予想が出来ないようです。オリパラの実施には大いに意義があるとは思いますが、リスケにかかる追加コストの規模によっては、COVID-19への対抗に悪影響を与えないか心配しています。

国際情勢の観点からもCOVID-19は確実に大きな脅威ですが、いくつかの国際案件に変化をもたらしています。その一例がイラン核合意を巡り対立が続き、また年始のソレイマニ司令官殺害によって全面戦争一歩手前まで緊張が高まった米・イラン関係です。いまだにイラクを舞台にした報復合戦は継続中ですし、相互に批判の手を弱めてはいませんが、両国とも今はお互いを叩く余裕を失っていることも確かです。

今週、イラン政府が公式にIMFに対して50億ドルの緊急支援要請を行いました。実は1962年以降初めてのケースで、今、アメリカと全面的に衝突し、緊張が高まるイランが、アメリカの影響下にあるIMFに支援要請をするという事態にまで、COVID-19の感染はイランの首を絞めているのだといえます。

革命防衛隊をコロナ対策の責任者に据え、国内的にはハーマネイ師率いる政府への支持を何とか保つために、「こういう状況に陥ったのはアメリカの陰謀だ!」という姿勢を表に出しつつ、国際社会を通じてアメリカに対し経済制裁を撤回するように求めるという戦術を用いて、何とか統一性を保とうと必死です。イラン国民の多くはそのような小手先の策には乗りませんが、指導部への反感を募らせてまたデモに訴えかけることが出来ないほど、新型コロナウイルスの蔓延はイラン国民を恐怖に陥れていることが分かります。

これで急転直下、米イラン間の高まる対立と緊張が緩和されるとは考えづらいのですが、約60年にわたる宿敵への反抗は、米イランともにしばし休戦と見ることが出来、武力衝突の危機はしばらく棚上げできるかと考えます。

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