パンデミックで変わる世界には、どんな未来が待っているのか?

 

新型コロナウイルスでも火花散らす米中両大国

ここ2年ほど世界を懸念させている国際情勢と言えばなんでしょうか。そう、米中間での争いです。貿易・関税の報復合戦に始まり、南シナ海での軍事的な緊張、One China-One Asia外交と、アジア太平洋の勢力圏堅持を狙う米外交との鬩ぎあい(主に同盟国の確保)、アフリカ・中東地域での覇権争いなど、例を挙げれば次々出てくるほど、米中間は、現代の2大国として、争っています。

その争いに今回、『どちらが新型コロナウイルスを持ち込み、ばら撒いたか』という責任転嫁合戦が、メディアやSNSを通じて繰り広げられています。

「新型コロナウイルスは米軍が武漢に持ち込んだのだ」と40万人以上のフォロワーを持つ中国外務省の副報道官である趙氏が言えば、「けしからん!全くの言いがかりであり、断じて許すことはない。もともとこれはChineseウイルスだ!」とトランプ大統領やポンペオ国務長官が応戦する事態になっており、対立がエスカレートする一方です。

つまり、私がよく話す交渉術の緒なしに絡めると『一度上げてしまった拳を降ろすきっかけを双方とも失った状況』と言えるでしょう。一応、駐米中国大使の崔天凱氏が趙副報道官のSNSでの言論を「狂った言論だ!」と批判することで、何とかエスカレートを止めようとしていますが、アメリカ国内で感染が爆発的に広がる中、崔大使の努力もうまく作動していないような気がします。

ちなみに、今回の新型コロナウイルスの蔓延に対する戦いは、世界の2大国として、一旦戦いの矛を収め、休戦したうえで、見えない敵である新型コロナウイルスの蔓延に対する協調姿勢を取り、並んで対策に当たるという、『国際情勢の緊張緩和と信用の回復に寄与する絶好のチャンス』ではなかったかと思います。

もし、それぞれが知見と資金を持ち寄り、世界レベルでの新型コロナウイルスの蔓延の封じ込めに乗り出すことが出来たら、自国第一主義の高波が国際社会を襲い、協調が絵空事とまでこき下ろされるようになった世界の潮流を、再度、国際協調の拡大と深化の方向に戻すことが出来たかもしれませんが、その代わりに、両国は、すでに十分すぎるほど険悪になってしまった米中関係の緊張を極限まで高めることになってしまっているような気がします。

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