パンデミックで変わる世界には、どんな未来が待っているのか?

 

パンデミックで生じたIS復活の隙

いつになるかは分かりませんが、いずれCOVID-19が封じ込められた際、世界はもう協調など考えられないほど疲弊し、相互不信と嫌悪がはびこるような世界になっているかもしれません。考えるだけでも恐ろしいことです。

COVID-19が時期をずらす形で次々と世界を恐怖と不安に陥れていく様は、約1年前に『完全制圧』が謳われた恐怖の渦の再興を思い起こさせます。それは、イスラム国(IS)が独自の協議を盾に“国家樹立”し、その影響と恐怖を世界にじわじわと広げていったあの恐怖です。

2019年3月にトランプ大統領は「ISは100%制圧した」と誇らしげに演説しましたが、それから1年間、実際にはどうだったでしょうか?かつてISが掌握していたイラクも、シリアも、別の戦いと国内の状況不安定に苦しめられています。

イラクではいまだに政府樹立に至らず、シリア・イドリブ県では、アサド政権軍とトルコ軍が直接的に対峙し、イドリブに追いやられていたシリアの反政府武装組織(アメリカに支援されたクルド人勢力)が、シリア政権軍とトルコ軍から挟み撃ちにあうという悲劇も生んでいます。

COVID-19の蔓延が本格化し、その牙が欧米に到達するまでは、シリア・イドリブ県での衝突は、多かれ少なかれ、アメリカとロシア、そしてEUを巻き込んだ国際的な案件だったはずで、それ故に、ISの残党が入り込む隙間はなかったのですが、COVID-19の欧米諸国上陸により、各国がその対策にかかりきりになり、中東でのプレゼンスが疎かになった隙にISが混乱に乗じて復活してきているとの情報があります。

その例として、ここ数週間ほどでイラク各地でのISによる米軍やイラク政府への襲撃が相次ぎ、実際に米軍が大被害を受ける事態になっています。年始には報復戦として、イランの革命防衛隊によるミサイル攻撃を受けたイラク米軍基地ですが、イラン革命防衛隊とその下部組織からの攻撃に加えて、今やISからの襲撃も受けるようになり、混乱が増しています。

またイドリブ県でも、ISの旗がはためいているとの情報があり、シリアからもトルコからも見捨てられたイドリブ県の人々が、ISに参加しているとの恐ろしい情報も入っています。もしそうだとしたら、一度消えたとされるISの恐怖の種がそこに芽生える事態になっているといえるでしょう。

他には混乱極まるアフガニスタンの首都カブールでISによる襲撃がここ5日ほどで頻発していて、和平合意について話し合わないといけないタリバンも、アフガニスタン政府も、再びISへの対抗を行うため、状況が混乱しているようです。

加えてモザンビークをはじめとするアフリカ東部でもISの影が濃くなってきており、東アフリカを舞台に繰り広げられるアメリカと中国の“国盗り合戦”に非常にややこしい影響を与え、それが地域の不安定化に寄与しているという情報も入ってきました。(ただでさえバッタの大発生で大変な地域ですが、そこにCOVID-19の脅威とIS復活の脅威が同時に襲い掛かり、東アフリカ(アメリカのグローバルテロリズムへの対抗拠点の一つ)の政治的な安定を根底からひっくり返しかねない事態になっています。

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