またも韓国か。コロナ後の経済と秩序の回復を阻むこれだけの要因

 

そのような中、COVID-19の感染拡大は、国際社会における軍事力による抑止力さえ奪っています。その顕著な例が、米海軍の空母4隻で広がる感染拡大です。空母セオドア・ルーズベルトだけで200人強の感染者が出て、現在グアムで5,000人弱の乗組員全員に対する検査と船内消毒でしばらくは戦略的な展開は不可能とされています。他の空母についても感染拡大は止められず、現時点で世界展開するアメリカ海軍の3分の1に相当する戦力が動けず、著しい作戦能力の低下が見込まれています。

オバマ政権時代より【アメリカは世界の警察官ではない】との外交・安全保障体制が取られ、それがトランプ政権でより顕著になってきている中、世界で唯一すべての海に基地を持ち、展開している米軍が、即応能力を著しく削がれている状況は、「アメリカの戦力による世界の安定維持という現状」に大きくマイナスの変化をもたらすことになります。

そこに目をつけているのが、中国です。米中貿易戦争を戦うと同時に、南シナ海・南沙諸島海域で米中の艦船がにらみ合いをし、緊張の下での安定をここ数年保ってきていますが、今回、アメリカの即応力が削がれている状況で、しばらくおとなしくしていた中国海警の艦船が暴れています。例えば、今週初めには南沙諸島海域で操業中のベトナムの漁船に体当たりをして沈没させていますし、これまでアメリカ海軍から猛烈なプレッシャーを受けていた台湾海峡にも連日出没し、台湾政府に対して圧力をかけています。また、日中関係は最近改善していると言われていますが、連日、沖縄・尖閣諸島海域に侵入して圧力をかけています。

ポイントは、海軍の艦船ではなく、あくまでも日本の海上保安庁に当たる海警を用いている点です。

海警の“取り締まり”と称した行動で、南沙諸島海域諸国(ベトナム、フィリピン、インドネシアなど)の出方を探りつつ、台湾海峡や尖閣諸島周辺では、アメリカの出方を探っています。もし、どこからも目立った反撃を食らわなければ、次は海軍が出てきて、中国の地域における覇権拡大への動きを取ることになるでしょう。

残念ながら、COVID-19の猛威はアメリカ、日本、東南アジア諸国の即応性を削ぎ、効果的な外交・安全保障上の応対が出来ていない状況です。このことにより、地域安全保障体制のバランスが、今後、中国によって大きく崩され、対応や体制の見直しを近く迫られることになるかもしれません。これもまた、COVID-19がもたらす大きな国際情勢、そして国際協調への挑戦です。

世界中でワクチンの開発が進み、治療薬の開発も急ピッチで進められており、国際協調の芽は確実に大きく成長しているようにも思えますが、同時に、Yellow Perilというアジア人蔑視の思想が欧米で蔓延し、「まずは我が国」という自国中心主義が、トランプ大統領やその信奉者のみならず、彼ら(彼女たち)を嫌っていたはずの国民にまで広がっていることに懸念を抱きます。ネットを通じた連帯は世界的な広がりを見せていますが、実際の社会行動になれば、その協調もどこかに行ってしまうような気がします。

国際情勢の裏側、即使えるプロの交渉術、Q&Aなど記事で紹介した以外の内容もたっぷりの島田久仁彦さんメルマガの無料お試し読みはコチラ

print
いま読まれてます

  • またも韓国か。コロナ後の経済と秩序の回復を阻むこれだけの要因
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け