私たちの暮らしや働き方を激変させつつある新型コロナウイルス禍ですが、住宅需要までをも大きく変えてしまうようです。近年の住宅間取りが、テレワークや休校による家族の在宅時間の変化に対応できないことを指摘するのは、一級建築士でマンション管理士でもある廣田信子さん。廣田さんは自身の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』で、今後はテレワークの加速により「自宅」の意味が変わるとともに、住宅需要の傾向も大きく変化するとしています。
コロナ後はマンションの需要も変わる?
こんにちは!廣田信子です。
今後のマンション事情はどうなるのでしょうか。
最近の住宅の間取りは、家族みんなの姿が見えるように、個室をできるだけなくしてリビングを広くとる…というのが流行でした。共働きが増え、普段は夫婦とも家にいないから、家にいる時ぐらいは家族が親密に…というのです。専業主婦の方も、普段は夫が仕事で家にいないので、子供が学校に行っている時間は自分だけの時間がとれるので、それを歓迎していました。
それが、今回の新型コロナウイルス騒動で、子供も、夫婦とも自宅で一日中過ごすことになり、その間取りがストレスを生んでいます。1人になれる時間がない家族と離れて、外の人と繋がれないというストレスです。Web会議があるのに、まわりに家族がいて集中できない、取引先に電話がかけにくい、オンライン飲み会に参加しにくい…と。
夫婦の一方がリビングで仕事をしていると、家族はテレビも見られないというストレスもあります。
また、マンション需要でいうと、このところの需要は、専有部分は広くなくても、共用施設が充実していて、通勤や遊びに便利な立地のタワーマンションに住みたい…という傾向がありました。ところが、今、共用施設はコロナ対策で閉鎖。近かったデパートもレストランも劇場も休業。エレベーターで人と乗り合わせる不安もあり、敷地内に広い公園があるわけでもないので、結局、自宅に家族4人がいる生活をすることになり、人口密度の高さに、家族中のイライラが募ります。
家族に気兼ねせずに籠って、テレワークをしたり、オンライン飲み会ができる部屋がほしい。これで、今後テレワークが進んで、夫婦共に自宅で仕事なんてことになったら、とても、このスペースでは無理。
さらに、モノを持たない暮らしをしていたけど、今回のことで、備蓄の重要性も痛切に感じていて、収納スペースも、もっとほしい…という声も。通勤も減るのだったら、少し都心を離れても広い住戸に移りたい…という需要が増えるのではないでしょうか。
前々から、今後、テレワークが進むのだから、狭くても高くても都心、駅近と言う傾向が変わるのでは…と言っていましたが、なかなか傾向は変わらず、都心や駅近人気が続いていました。しかし、今回のコロナ騒動で、間違いなくテレワークは加速し、「自宅」の意味が変わり、住宅需要の傾向も変わると思います。
そういう私に、いつもなら、「人は簡単には変わらないよ」と言っていた不動産業界にいる知人が、今回は、「災いが去れば元に戻るよ」と言わずに、「変わるだろうね」と、ライン電話の向こうで、深いため息をつきました。
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