アサヒノマスク批判首相がアベノマスクで踏んだり蹴ったりの悲劇

 

起点は安倍応援団の上念司氏のツイッターから

なぜ安倍首相がここで「朝日が布マスク3,300円」という話を持ち出したのかと言えば、安倍応援団の片隅を占める経済評論家で、朝日新聞を縮小することを目的とする「朝日新聞縮小団」なる運動を推進する上念司氏が、自身のツイッターで「朝日新聞が2枚で3,300円のぼったくりマスクを販売中!買っちゃダメだよ!」と煽り立てたからである。ネット上では、「朝日新聞に特大ブーメラン直撃!ぼったくりかよ」「朝日新聞社は国民のことを何も考えていないぼったくり悪徳商法会社だった」などのツイートが相次いだ(21日付毎日)。おそらく安倍首相は、自宅で犬の背中など撫でながら寛いでいる時に、お友達のツイッターを読んで、「おっ、これは朝日攻撃に使えるネタだな」と思ったのだろう。

ところが、このマスクは実際に2枚で3,300円を定価とする高性能マスクで、「繊維の街」として知られる大阪府泉大津市の南出賢一市長と泉大津商工会議所がマスク不足解消を目指して、市内の繊維業者に呼びかけて製造・販売を始めたもので、そのうちの1社である1917年創業の老舗「大津毛織」が製造した150回洗濯しても使えるものを、朝日が販売していた。

上念氏は、経済評論を生業とするのであれば、朝日が売っている、高い、というだけでそれを慌てて攻撃対象とするのではなく、どこの地域のどこの企業がどんな思いでこれを製造しているのかを、少しでもいいから調べて、発言すべきだったろう。ましてや一国の総理が公式の記者会見でそれに言及するのであれば、このような人物のツイッターを鵜呑みにするのではなしに、大阪の地域末端の人々がどんな思いでコロナ禍に立ち向かっているかに思いを馳せ、心を寄せ、励ましの言葉を送るべきだったのではあるまいか。

4月22日には泉大津市の南出市長が首相官邸を訪れ、そのマスクを首相が装着するよう求めた。今の「アベノマスク」の貧弱な布マスクを止めて泉大津の高性能マスクに変えたら、安倍首相も大したものだと思うが、どうだろうか。

この「アベノマスク」騒ぎには、もう1つ、ダメ押しのような落ちがついた。政府が調達した布マスクのうち伊藤忠と興和を通じて海外から緊急輸入した分に、判明しただけで7,870枚に汚れがついていたり異物が封入されていたため、慌てて回収する羽目となった。踏んだり蹴ったりとはこのことである。

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