コロナ禍に米ドルと覇権争いが激化?中国デジタル人民元の現実味

 

中国が推し進める「一帯一路」とは何か

中国が進める巨大な経済圏構想。中国とヨーロッパの間では、はるか昔から、貿易が盛んに行われ、中国の絹がヨーロッパ大陸にたくさん運ばれたことから「シルクロード」と呼ばれていました。一帯一路はかつてのシルクロードの拡大版・21世紀版の構想になります。

「一帯」とは、中国西部から中央アジアを経由してヨーロッパへと続く「シルクロード経済ベルト」で、「一路」とは中国沿岸部から東南アジア、スリランカ、アラビア半島の沿岸部、アフリカ東岸を結んだ地域を指した、「21世紀海上シルクロード」を意味します。

そして、これらの地域に道路や港湾、発電所、パイプライン、通信設備などインフラ投資を積極的に行っています。これらの地域一帯に、デジタル人民元が決済通貨として定着していけば、ドル基軸に代わる中国経済圏の確立の可能性があるのです。

なぜデジタル人民元なのか

デジタル人民元の最大の狙いは、ドルの通貨覇権、つまり、基軸通貨としてのドルに対抗することです。『地政学とは何か』の著者、船橋洋一氏によると、基軸通貨ドルについてのパワーについて、フィスコの特別インタビューで次のように語っています。

「国際金融の決済システム『SWIFT』(国際銀行間通信協会)は、アメリカにとって最後の砦」と述べ、「2016年時点で、200以上の国・地域、約1万1000の金融機関がドル取引にこの決済システムを使うが、すべての送金データをニューヨークで把握することができる。もし、SWIFTから除外されれば、国際取引ができなくなり、除外された銀行はあっという間につぶれる」

そして、このドル決済のシステムのパワーは、たとえ、基軸通貨の国の力が弱まっても、ネットワーク効果で基軸通貨の強みは残るのです。

人民元そのものは、基軸通貨の地位とほど遠い状態にあります。リーマン・ショック後、中国が人民元の国際化を視野に、金融自由化などの改革を徐々に進めてきました。しかし、変動相場制を取っておらず、自由に売買できない点や、2015~2016年に株価が暴落した時には、人民元の下落と資本の流出が止まらなくなるなど、クロスボーダーの資本取引を大幅に規制せざるをえなくなりました。

このような経験から、世界が基軸通貨とし人民元を使用することはないでしょう。そこで、中国人民銀行は、資産の裏打ちがあるステーブルコインとして、デジタル人民元の発行をし、ドル覇権の地位を逆転したい思いがあるのです。

中国では、アリペイやウィーチャットペイなどの浸透率が高く、デジタル人民元が発行されれば、一気に進みやすいでしょう。さらに、東南アジアや一帯一路の地域でもデジタル人民元が使われる可能性が高いといえそうです。真の意味で、『100年のマラソン』を完走し、世界帝国として復興を果たすためにも、デジタル人民元は欠かせない構想なのです。

shutterstock_651839455image by : shutterstock

print
いま読まれてます

  • コロナ禍に米ドルと覇権争いが激化?中国デジタル人民元の現実味
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け