コロナ禍のマスク不足で見えた可能性。アパレルの国内生産回帰

shutterstock_1734174284
 

新型コロナウイルスの影響でマスクが品薄になってしばらくすると、日本ではマスクを手作りする人たちが現れました。ペットボトルや紙オムツやブラジャーと、代用品探しの狂騒を繰り広げた中国の人たちは「手作りの発想」に驚いたそうです。ファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんは、メルマガ『j-fashion journal』で、日本人と中国人のマスクへの意識が真逆であると解説。手作り布マスクの価値が認識されたことで、アパレル業界が中国依存から脱却し、国内生産に回帰する可能性が見えてきたと期待しています。

マスクから国内生産が立ち上がる

1.コロナ禍のマスク問題

コロナ禍により、世界各国がマスク不足に陥った。マスク供給は中国に依存していたが、中国政府はそれを知りながらマスクを輸出禁止にした。中国国内からもマスクが消えた。マスク着用を義務づけられた中国人は、マスクの代用品を探した。ペットボトル、生理ナプキン、紙オムツ、オレンジの皮、白菜、瓢箪、ブラジャーのカップ等々をマスクの代用品として身につけ、その写真がネット上に拡散した。

中国人は日本人がマスクを手作りするのを見て、「マスクを作るという発想はなかった」と言ったそうだ。世界最大の繊維製品の輸出国には、家庭科の授業もなく、ミシンの使い方も教えていなかった。

日本でもマスクがなくなったが、マスクを手作りする人が増え、ガーゼ生地やゴム紐が店頭から消えた。本業を自粛している企業もマスク生産を始めた。機屋、縫製工場だけでなく、航空会社の客室乗務員、ナイトクラブのホステスもミシンを踏んでマスク生産を行った。

同時に、中国でもマスク生産ブームが起きていた。こちらは、不織布マスクの機械を導入し、フル生産を始めた。新規参入が相次ぎ、あっという間にマスク生産は飽和状態となり、次々と倒産しているという。中国政府が輸出を禁止していたので、個人ベースで日本に輸出した。それを中国人が経営するタピオカ屋や雑貨屋で販売したり、路上販売を始めた。

それらのマスクは、どこで作られたのか分からず、性能や品質が規格を満たしているかも分からない闇マスクである。当初の販売価格は一枚100円から始まり、すぐに60円程度となり、国産マスクが出回るようになると更に価格は下落した。

2.「防護マスク」と「エチケット・マスク」

日本と中国では、マスクに対する考え方も異なる。中国人のマスクは、ウイルスを防ぐ防護マスクだ。他人から自分が感染しないように防ぐことが目的である。

日本人のマスクは、小学校の給食マスクが基本であり、配膳する人の唾液が飛ばないようにするのが目的のエチケット・マスクだ。自分が無症状でも感染している可能性があるので、他人に感染させないようにマスクを付ける。それが日本人の発想である。

同じマスクでも日本と中国の発想は正反対だ。防護マスクと考えるから、布ではなく、ペットボトル等を加工したのだろう。「アベノマスク」と揶揄された政府支給のマスクは主にガーゼマスクだった。政府がガーゼマスクを支給したことにより、布マスクは市民権を得た。安心して生産、販売ができるようになったのだ。そして、各企業のマスク生産が加速した。

アベノマスクは品質管理や検品において、素人同然の仕事だったが、布マスクを認定したという点においては評価しても良いのかもしれない。

print
いま読まれてます

  • コロナ禍のマスク不足で見えた可能性。アパレルの国内生産回帰
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け