一触即発の朝鮮半島。唯一巻き添えを食う可能性がある日本の運命

 

金正恩氏の健康不安説や安否確認が行われた際には、「仮に金与正氏がリーダーシップを引き継ごうとしても、軍経験がない彼女に対して軍がクーデターを起こして、金王朝が終わるだろう」という見方が強く、「ゆえに、それはない」と言われましたが、今回の騒動において、実際に軍が彼女の意向を汲んで開城と金剛山に部隊を配置していることから、詳細はまだ不明ですが、確実に金王朝内でのリーダーシップ移譲の動きが加速しているように思います。

特に死せずとも、妹に権力を譲っていくという決断を金正恩氏が行っているのだとすれば、期間限定でも金与正氏が率いる北朝鮮という現実が出てくるかもしれません。そのためには、2010年の韓国・延坪島への砲撃事件が金正恩氏の手柄として讃えられ、彼の支配基盤を固める権威付けに使われたように、金与正氏の権威付けのために何らかの武力攻撃が韓国に仕掛けられる可能性が高いのではないかと思われます。

問題は、それがどのような内容でどのような規模なのかということで、さすがに核兵器の使用はないかと思いますが(核を使用してしまうと、米中露の非介入方針が覆り、北朝鮮を“終わらせる”動きが一気に加速することになるので)、何度も脅しとして用いられた『ソウルを火の海に』を現実化する攻撃を行うことは大いに考えられます。場合によっては、日本もその災禍に巻き込まれるかもしれません。

北朝鮮暴発への警戒もあるのでしょうか。6月16日と17日に米中外交トップがホノルルで急遽会談していますが、ここでは米中両国の対立事項については棚上げし、朝鮮半島有事についての対応“のみ”が議論されたようです。アメリカも中国も(欧州も)韓国と北朝鮮に自制を促していますが、自国の権益に被害が及ばない限りは、参戦はしないことで合意した模様です。

同様の内容の“合意”や認識の共有は、18日に行われた朝鮮半島問題を話し合う“ストックホルムグループ”(注:日本はなぜかメンバーではない)のオンライン会議でも確認され、それが米欧などからの“自制要請”という形で表出していると言えます。

韓国と北朝鮮が国境線を挟んで一触即発の状況となり、どちらも互いの面子のために掲げてしまった拳を下げることが出来ない状況に陥っていますが、各国が非介入を決める中、唯一、直接的な影響を受けそうなのが、我が国日本です。

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