ボルトン氏のトランプ暴露本でバレた安倍首相の「体たらく外交」

 

安倍首相が息巻いた「イラン訪問」の裏側

この本の中でまず目についたのが、2019年トランプは安倍首相に緊張感の続くイランとの橋渡しを依頼したという話しです。これはボルトンも後になってから知ったことだと書いていますが、恐らくトランプの依頼ということで、外務省の官僚を総動員して調整を務めたのでしょう。同年の5月27日東京で行われた日米首脳会談で、安倍首相は正式に6月イラン訪問を告げたそうですが、ボルトンによれば当のトランプはうたた寝中でろくにその話を聴いていなかったとのことです。

5月に国賓として訪日する前に安倍首相と会ったボルトンはそのタイミングで、安倍首相がトランプの頼みでイランに行くことにした、自分には役に立てる見込みがあると聞かされたそうですが、当時は失敗するのが目に見えている役割をトランプが安倍首相に押し付けたのは明白に見えたものの、これは酷いアイデアであると安倍首相に口にすることはできなかったと振り返っています。

イラン訪問の結果は皆さまご存知の通りで、41年ぶりの日本の首相の訪問という触れ込みでしたが、最高指導者のハメネイ師はトランプは意見交換するにふさわしい相手ではないと頭から突っぱねる発言をし、ちょうどその会談の最中にイラン沖で日本などの海運会社が運航するタンカーが攻撃される始末で、この首脳会談は完璧な形で失敗に終わります。

トランプの依頼でどうみてもガキの使いにしかならないイラン訪問を実現させた安倍首相は、帰国後さっそくトランプとの電話会談を実施しましたが、トランプ自身はすでに自分が依頼したことさえすっかり忘れ、協力には感謝するが個人的には日本に米国の農産物をもっと買ってもらう方が重要だと返答して、一か月もたたないうちにその興味はイランよりも自分の大統領選挙の再選に有利に働く材料に移っていたといいます。

ボルトンは、トランプはとにかく個人的利益と国家の利益というものの違いが全く判らないと酷評していますが、まさにこのエピソードはその所以ともいえるものだと言えそうです。

なんでも言うことを聞いてしまう典型的な抱きつき外交の所産

このメルマガでは安倍首相の対米外交姿勢は本当に今のままで大丈夫なのかということを何度かご紹介し、MoneyVoiceも掲載されていますが、どうも私が危惧したことはほぼ事実のようで、この本を読み進めれば進むほどそのやり方の稚拙でろくでもない、いわゆる抱きつき外交である点が呆れる状況です。

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米朝首脳会談を巡るやりとりでも安倍首相は多く登場することになっていますが、韓国の文在寅大統領がかなり厳しい発言をしたのに対し、安倍首相はとにかくトランプべた褒めの状態で、日韓のリーダーの言動が大きなコントラストとなって現れたことを物語っています。国内では米朝会談の直後次は私自身が、金正恩委員長と向き合い、解決するなどと耳障りのいい発言を安倍首相がしていますが、結局何のアクションもなければ進展もなく、トランプ安倍共に北朝鮮は政権にプラスになるよう利用していたことが浮かびあがってくる内容となっています。

すべてのエピソードを紹介したらきりがない状態ですが、事程左様に安倍政権の対米外交はトランプの言いなりで、果たしてこうしたやり方が本当に国の利益を確保するうえで、まともに機能しているのかどうかかなりクビをかしげたくなる内容満載で、トランプのことよりも安倍首相の行状を把握するのにはお勧めの一冊となっています。国内ではもはや敵なし、やりたい放題で、すでに法治国家の枠組みを大きく逸脱してしまった感のある安倍首相ですが、トランプに対する対応はお粗末極まりないことが改めてこの本で暴露されてしまった状況です。

為替の世界ではドル円は常に米国との政治的駆け引きによりその水準が決まってきた経緯がありますが、トランプのいうことなんでも聞きますの安倍政権では、米国の連邦債務が今年年末で28兆ドルを超えるから、日本は円高にシフトするようになどと言われたら、二つ返事で実施してしまいそうで恐ろしいものがあります。

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