「東京問題」バトルは時間のムダ。今こそ議論すべきPCR検査の戦略

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専門家会議が廃止され初めて開催された専門家の分科会後、尾身会長は「検査体制拡充を戦略的に進める必要性」を強く訴えました。メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』著者で健康社会学者の河合薫さんは、専門家会議を解散した途端、専門家の知見や意見は全く生かされなくなっているのではないかと、東京都の発着を除外すると決定したものの「Go Toキャンペーン」を計画どおり実施しようとする国の姿勢を疑問視。県をまたぎ公共交通機関を利用するにはPCR検査を義務化するなど、検査のあり方を早急に議論する必要があると訴えています。

PCR検査。なぜやらぬ?

「東京問題」を巡り、国と東京、いや、正確にいうと菅官房長官と小池都知事が火花を散らしています。…このコロナ禍に、残念すぎる、極めて無責任なバトルです。あまりに“アレ”なので、おさらいするのもはばかれるのですが、ざっと振り返ります。

きっかけは菅氏が11日、北海道の講演で、「この問題(コロナ感染の急拡大)は圧倒的に『東京問題』と言っても過言ではないほど、東京中心の問題になっている」と述べたことです。

これに対し小池氏は13日、「国の問題」と反発。感染者が全国で再び増加している中、政府が旅行を促進する「GoToキャンペーン」の前倒しを発表したことにかみつき、「冷房と暖房の両方をかけるようなこと」と、批判したのです。

メディアからすればこのバトルはおもしろいようで、テレビ、新聞、ネットニュースがこぞってとりあげ、「東京問題」という新語が急速に広まりました。まぁ、感染者数の推移を全国地図で見れば、東京などの首都圏を中心に感染者数が増えてることは明らかですし、都内の感染者数が200人を越えている中で「今さら辞められない」という理由で、「GoToキャンペーン」を前倒しするのも、「?????」なお話ではあります。

でも、だからこそ、一緒に何をすればいいのか?を考えるのが政治家の仕事ではないのでしょうか。そもそもついこないだまで、まるで水戸黄門の印籠のように、「専門家の意見が~~~」という言葉を連発して拡大防止措置をとっていたのに、専門家会議を解散した途端、専門家の知見や意見は全く生かされなくなってしまいました。これではただ単に「責任逃れ」したいがために、専門家をスケープゴートにしたと批判されてもしかたがありません。

専門家会議が廃止され、新たに設置された専門家の分科会の第1回目の会合が行われた7月6日。尾身会長は「検査体制拡充を戦略的に進める必要性」を強く訴えていました。

「検査は国も拡充した方が良いということで、様々な努力をしていただいた。しかし、実は検査拡充をするため、一体どういう風な戦略を取るのか、今まで十分に議論されていなかった。今後は、感染リスクをどこまで許容できて、どこまで防ぎたいのか、コンセンサスが必要」(by 尾身会長)

尾身会長は、検査体制を考えていくことが「感染症対策の王道」であり、これまでの「有症状者」に加え、「無症状者+事前確率が高い」人々にPCR検査を徹底的に行うことが重要だ、と指摘。さらに、「無症状者+事前確率が低い」人々への検査のあるべき姿について、「一定のコンセンサスを構築する時期にきたのではないか」と、訴えていました。

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