武漢型でも欧米型でもない。日本中に蔓延する新型コロナの正体

arata20200716
 

連日多数の陽性者が報告され、次々とクラスターも発生している新型コロナウイルスによる感染症。そんな現状を尻目に政権は、日程を早めてまで「Go To トラベルキャンペーン」を開始する姿勢を崩しません。このような動きに対して批判的な論を展開するのは、元全国紙社会部記者の新 恭さん。新さんは自身のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』で、キャンペーンよりも徹底したPCR検査を優先すべしとし、その理由を記しています。

いま「東京型」コロナが全国に蔓延中

どうやら、東京を中心に再び猛威をふるっている新型コロナウィルスは、武漢型でも、欧米型でもなく、東京型とでも呼べる遺伝子配列に変異し、全国に広がっているようだ。

東京大学先端科学技術研究センターの児玉龍彦教授によると、RNAウィルスであるコロナウィルスは、増殖するたびに、遺伝子配列を変異させ、人の免疫の仕組みから逃れて進化してきた。

ゲノタイプ(遺伝子型)を追ってみたら、武漢型、欧米型はいつの間にか日本では見られなくなっていた。今や、日本で変異したウィルスのエピセンター(震源地)に東京、大阪などの大都市がなっているという。

そんなさなか、安倍政権は、旅行代金の半額補助をうたって、「Go Toトラベル」の“前倒し大号令”を発した。かつてない危機に瀕する観光業界を救おうという意図は痛いほどわかるのだが、いくら値段が安くなるといっても、不安をかかえて旅行を楽しめるものだろうか。東京の旅行客がウイルスの運び屋にならないともかぎらない。

かたや小池都知事は「不要不急の他県への移動は控えていただきたい」と政府方針との違いをちらつかせるが、つまるところは「新しい日常」の名のもと、個々人の心がけに責任を押しつける。行政の役割はどうした、と言いたい。

要するに、政府も東京都も、いま優先してやるべきことをやっていない。経済活動を安心して進めるには、なによりも検査、検査。まわりに感染者はほぼいないという安心感がとにかく必要だ。

とりわけ重要なのは無症状の感染者を見つけ、ホテル等に一定期間、こもってもらうこと。たとえば武漢では、1,000万人近い市民全員のPCR検査を短期間で実施したが、東京でも、その気になればできるはずだ。

7月3日、日本記者クラブで講演した児玉教授は、「中国の990万人一斉調査のようなことをやるべきだ」と強調し、大学の研究機関を新型コロナウイルスの検査や研究に活用しようとしない国の姿勢に憤りの声をあげた。

「コロナ禍が起こったとき、文科省の指示によって東大をはじめ全部閉じてしまった。われわれが研究を続けようとしたら、あらゆる妨害の渦です。閉じているんだから人を来させてはいけない。外部の検体を入れてはいけない。日本の科学技術がこれだけ衰退しているのは空前絶後です。本来、科学者はこういう危機の時、真っ先に立ち上がって道筋を考えるべきなのに」

児玉龍彦教授といえば、2011年7月27日の衆議院厚生労働委員会で、「私は満身の怒りを表明します」と、福島第一原発事故の放射能汚染をめぐる国の対策を批判したことが思い出される。その正義感あふれる姿勢は今も健在だった。

厚労省は、感染研と地方の衛生研、保健所のネットワークばかりにこだわって門戸の狭いPCR検査を実施し、オールジャパンを結集して検査能力を飛躍的に拡充させる努力をしてこなかった。

一方、文科省はクラスターを避けるため大学を閉鎖し、その結果、大学の研究所は宝の持ち腐れになった。なにも、医学関係の研究機関まで巻き込むことはなかったのだ。

京都大iPS細胞研究所の山中伸弥教授がこう語っていたのを思い出す。

「iPS研には新型コロナのPCR検査をできる機器が30台くらいある。その機器を使って普段からPCRをしている研究員たちが何十人かいるが、自粛で多くの人が実験せずに在宅になっている。大学の研究所などの力をうまく利用すればPCRの検査能力は2万をこえて、10万くらいいける可能性がある。研究者として検査能力の向上に貢献したい」

研究者はコロナ対策に貢献したくてもできない状況が続いた。これは単に「縦割り行政の弊害」ではすまされない。国家の損失そのものである。

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