「虐待しないと誓って」と文科省HPに書く萩生田大臣の想像力欠如

 

そして、この格差問題は健康社会学的に捉えれば、「リソース」の問題なのです。

リソースは世の中にあまねく存在するストレッサー(ストレスの原因)の回避、処理に役立つもののことで、お金や体力、知力や知識、学歴、住環境、社会的地位、サポートネットワークなどはすべてリソースです。

資本主義社会ではカネのある人ほど、さまざまなリソースの獲得が容易になる一方で、おカネがないと、その他のリソースも手に入らなくなります。

さらにリソースが欠けた家庭の子どもは、進学する機会、仕事に就く機会、結婚する機会など、すべてにおいて機会が奪われてしまう悪循環のスパイラルに入り込み、機会格差が生まれいくのです。

冒頭の事件の母親は、複雑な家庭環境に育ったとされています。大人になるまでにさまざまな機会が剥奪され、家族というリソースもなかったのではないでしょうか。

日本では児童虐待に対応する職員の数も欧米に比べると少なく、子供を保護する環境も足りていません。

詳しくは「世界から警告され続けた「大切な命」問題――Vol.111(「小4女児虐待死で浮き彫りになった、子どもの権利『後進国』日本」)に書きましたが、日本は世界から「国家レベルで児童虐待している」と批判されるほど、子供たちを守り、そして、その母親たちをサポートする仕組みが貧弱なのです。

萩生田文部科学大臣は、文科省のHPでこう訴えます。「大切なお子さまの健やかな成長のために、どうか虐待はしないと誓ってください」と。「子育てに悩みや不安があるときは、身近な人に相談したり、自治体の相談窓口を頼ったりしてください」と。

相談できる身近な人がいない=リソースの欠損、自治体に相談にいく時間も余裕もない=リソースの欠損、そういった人たちのことを一度でも想像したことがあるのでしょうか。

みなさんのご意見もお聞かせください。

image by: Shutterstock.com

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