すべては再選のため。トランプ「対中強硬策」で板挟みのニッポン

 

中国は、ドルと香港ドルのペッグ制を利用して、香港でドルを調達していた。これにより、中国の銀行が香港経由で借りているドルは、1兆2,000億ドルレベルである。

しかし、香港の優遇制度、特にペッグ制を米国が止めると、ドル調達ができなくなり、返済のためには、中国は米国債を大量に売って、ドルを手に入れる必要がある。

人民元は、まだ国際通貨として流通していないので、ドルを調達して、「一帯一路」構築の海外での投資や石油輸入の決済をする必要がある。

しかし、中国が大量の米国債を売る時には、米国債の金利が上昇する恐れがあるが、FRBは丸ごと買うことで金利を上げないようにするようだ。

そして、今後、中国はドルを手にいれることが難しくなる。中国経済の円滑油がなくなり、中国経済は縮小する危険もある。このため、世界の貿易量でトップの中国経済が縮小すると、世界経済も混乱する。当然、世界の株価も下落することになる。これをドイツは心配している。

このペッグ制廃止を米国がいつ行うかであるが、9月6日の香港議会選挙で、民主派候補が立候補できない時だと見る。

もう1つが、7月13日、マイク・ポンペオ米国務長官は「世界は中国が南シナ海を自らの海洋帝国として扱うのを認めない」とした上、ハーグ仲裁裁判所の判決に「米国の立場を一致させる」と強調。これまで米国は、同海域の領有権問題には関与せず、当事者による平和的な解決を求めるとしていたが、これを変えた。その上、尖閣諸島にも言及している。インド国境での紛争も追い打ちを掛けている。

7月15日には、ポンペオ米国務長官は、中国と領有権問題争いをするフィリピンやベトナム、マレーシアなどを支援していくとした。始めに、偵察用無人機を援助するとした。米国が本格的に南シナ海の紛争に乗り出すようである。

ファイブアイズ諸国(英国、豪州、カナダ、ニュージーランド)や日本、インドなども米国に同調する方向であり、中国の孤立化が鮮明になっている。英国は空母を派遣し、日米英の3ケ国で南シナ海で演習を実施するという。その後も、英国空母は、この地域に滞在するという。日米英豪対中になる。

EU諸国は中国を非難するが、米国に同調はしないようである。

その上、米国のウィリアム・バー司法長官は、ハリウッドの娯楽業界やグーグルやアップルなどのIT大手が中国共産党との「協力にあまりにも前向き過ぎる」と語って、禁止する可能性を示唆した。

その上にファーウェイ、ZTE、ハイクビジョン、ハイテラなど中国ハイテク5社の製品を使う企業との取引を禁じる「国防権限法」を、米国政府は8月に施行する。日本企業の800社超が調達戦略の修正を迫られることになった。この中国製品を使った企業は、米国政府への取引が禁止になるからだ。

これらを受けて、温厚な王毅外相は、米国を非難して、「マッカーシズムのパラノイア」と表現したが、中国も米国と全面的にぶつかるのは得策ではないと、強気の外交政策を変更するようである。

print
いま読まれてます

  • すべては再選のため。トランプ「対中強硬策」で板挟みのニッポン
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け