NYの地下鉄は赤字1兆円。米にジワジワ押し寄せるコロナダメージ

 

一昨日、4カ月ぶりに利用しました。 目的地はブルックリンだったので、地下鉄に乗るしか方法がなかった。 多少、緊張した感じで乗車するも、やはり人はまばら。 ガラガラというわけではありませんでしたが、いつものすし詰め状態に比べると、ひとつの車両に数人しかいない光景は、そこがまるでニューヨークの地下鉄とは思えないほどでした。

当然ですが、法律で決まっているので、乗車客は一人残らずマスク着用。 ほんの半年前、今年の頭に、「数カ月後、ニューヨークの住人、みんながマスクを着用するようになるよ」と言われても、この世の誰一人、信用しなかったと思います。 今さらながら、ニューヨークに20年住んでいる自分は、地下鉄の乗客全員がマスクをしている目の前の光景に、愕然としてしまいました。 「ここ……ニューヨークだよな…」と。

まばらな乗客を見て、この3カ月間、MTAは収入源がほとんどなかったという記事を思い出していました。 そのため以前から検討されていた地下鉄とバスの近代化計画は、延期するという記事も。

今回のMTAが発表した損失額は、毎月5億ドル(約536億円)、そして必要な80億ドル(約8577億円)の給付金の約半分しか受け取ってないとのこと。 累積赤字は100億ドル以上。 ここから、人件費の削減、運賃および通行料の引上げ、サービスの削減など、さまざまな救済策が出てくるはずです。

今回のニュース、個人的には非常に衝撃的でした。 頭ではわかっていたものの、なかなかリアルに体感はできていませんでした。 やっぱり、来るか…といった感想。 当然といえば、当然ですが、実はロックダウン以降、引きこもっている分、現実として実際の経済的ダメージを身を持って感じていた人はまだまだ多くはなかったはずです。

今現在も、世界で記録的な失業率を出しています。 4月にアメリカ全体で失業率14.7%という、世界恐慌以降で最悪の数字を出したのは記憶に新しい。 そこから再雇用率はまったく変わっていません。 で、なにより重要なのは、この数字に「休職者」が含まれていない、ということ。

従業員を解雇する前に、コロナが収まるまで一定期間の「休職」という形にしている企業は想像以上に多い。 それが長引くにつれ、結局、やっぱり「解雇」になるケースは想像に難くない。 つまり、今でさえ戦後最大の数字はさらに悪くなる可能性があるということ。 だからと言って、今ここで経済活動を焦っては、感染第2波が来る、というのが多くの専門家の予想です。 SNSでとりあえず「明日に希望を託そう!」と安易に書き込んでいる状況ではないかもしれません。

一般市民にも、実質的に今後は、体感するほどの経済損失がやってきます。 不必要に脅したり、煽ったりするつもりはないけれど、ここからどう自分たちは戦っていくのか。 耐え忍ぶのか、逆に打って出るのか、思い切ってビジネスモデルを切り替えるのか。 少しずつ感染リスクが下がってきている今、今度は、経済的サバイブについて、今一度、真剣に考える時が来ているようです。

image by:PatSaza / Shutterstock.com

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全米発刊邦字紙「NEWYORK BIZ」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ1000人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる。初の著書『武器は走りながら拾え!』が2019年11月11日に発売。

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