いちど設定した数値目標を途中変更するのはビジネス的にアリか?

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ビジネスマンたるもの、常日頃と言ってよいほど気にし続けていなければならないのが「数値」。さまざまな業種で、それぞれの「数値目標」を設定していると思いますが、これを一度設定して動き始めたあとに変更することは許されるものなのでしょうか? ビジネスパーソンを数学的に変身させる専門家・深沢真太郎さんは、メルマガ『深沢真太郎の「~伝える力が身につく~ 数学的思考の授業」』の中で、「設定した数値目標を途中で変更しても良いか?」という研修参加者からの質問に答える形で、納得のいく回答をしています。

数値目標は途中で変更してもいいのか?

先日、名古屋でビジネス研修に登壇。コロナ禍にもかかわらず多くのビジネスパーソンが集まりました。

終了後、参加者のおひとりがこんな質問をしてくださいました。

「いちど設定した数値目標は途中で変更してもいいのか?」

なるほど。ビジネスパーソンのリアルな疑問ですよね。こういうリアルな疑問や課題ほど、この授業で扱うべきと思います。同じように疑問に思っている人も間違いなくいるはずですからね。

結論から言えば、「変更してもOK」が私の答えです。というより、「変更すべき」が正確です。

私はこれを列車ダイヤと同じであると捉えています。列車の運行時刻は決まっています。出発から到着まで、それは異常なほど正確に決まっています。しかし、もし途中で何かトラブルや想定外のことが起これば到着時刻も変わります。

当初の予定時刻と違ってしまうことに(律儀な鉄道会社は)お詫びをしますが、それを心の底から非難する人などいないでしょう。

ビジネスも同じです。

最初に計画は決めます。もちろん数字で決めます。しかし途中でいろんなことが起こります。非論理的な生物である人間がする営みがビジネスです。計画通りに行くわけがありません。

重要なことなので繰り返します。計画通りに行かないのです。途中で変更するのは当たり前。むしろそれが自然。まずはここまででワンメッセージと思ってください。

さて、少し話を展開させたいと思います。

途中で変更するのは当たり前という前提のもとに、とはいえ事前の数値目標は適切であるに越したことはありません。あまり現実的でない数値目標を設定してもそれはなんの意味もない数字。いったいどんな数字を設定するのが良いのでしょう。

私は企業研修などでこのように提案しています。

「数値目標は3つの数字で設定する」

具体的には以下の通りです。

  1. ポジティブシナリオによる数値
  2. ネガティブシナリオによる数値
  3. 両者を使った期待値

まずはとにかく最高のシナリオを考える。

あらゆることがうまくいった場合、その数値はどれくらいになると想定されるか。それが「1」の数値です。仮に100とします。

次に真逆の行為をします。

とにかく最悪のシナリオを考える。あらゆることがうまくいかない場合、その数値はどれくらいになると想定されるか。それが「2」の数値です。仮に0とします。

最後に「1」と「2」のどちらに振れるかを想定します。もちろん結果はわかりません。

五分五分であれば50%。期待値は100×0.5+0×0.5=50です。

8割がたポジティブだと評価するなら80%。期待値は100×0.8+0×0.2=80です。

この3つの数値を使って、以下のように目標値を説明します。

最高で100が見込めます。
一方で最悪の場合は0も想定されます。
我々の市場も好況ですし、8割がたポジティブに振れると予測します。
ですから現状では80を目標設定にすべきです。

つまり目標は80だが、実際の数値は100と0の範囲に入る可能性が高い。
最悪は0になることも想定しておかないといけません。

こうすることで80という数値目標がテキトーに設定したものではないことになり、その数値を達成することが仕事の人物に納得感を提供することができます。

ビジネス数学の立場から申し上げれば、この事例はビジネスパーソンがもっとも確率を使いやすい場面だと思います。算数レベルの話ですから、誰でも活用できるでしょう。ぜひとも実践してみてください。

ではここまでをまとめましょう。

  • 数値目標は途中でどんどん変更すべき
  • もし数値目標に納得感が必要であれば、3つの数値を使って設定する

最後に、エクササイズを用意しました。ぜひトライしてみてください。

<1>
いまあなたの仕事における何らかの数値目標を思い出してください。それは変更すべきでしょうか? あるいはそのままでOKでしょうか? いずれの結論であっても、その理由まで明確にしてください。そしてその理由には、数的な根拠があることが理想です。

<2>
あなたが旅行に行きたい場所を設定してください。人数や時期も設定をしてください。

さて、以下の数値を「3つの数値」で設定してください。

  • その旅行で使うであろう金額
  • 出発から到着までの所要時間
  • その旅行中にあなたから誰かに「挨拶」をする回数

ふたつのエクササイズに共通するのは、未来を想像しないといけないということ。私の言葉で表現するなら、アサンプションベースの思考が求められるということです。アサンプションベースについては以下の書籍で解説しています。よろしければどうぞ。

徹底的に数字で考える』(フォレスト出版)

数字ベースで考えられる人だけが、「ヒト・モノ・カネ」を動かせます。ファクトフルネス時代に結果を出す新・思考法です。

そろそろ時間だ。今日はここまで。

image by: Shutterstock.com 

深沢真太郎この著者の記事一覧

日本大学大学院総合基礎科学研究科修了。理学修士(数学)。予備校講師から外資系企業の管理職などを経てビジネス研修講師として独立。大手企業・プロ野球球団・トップアスリートなどの教育研修を手がけ、一部企業とはアドバイザリー契約を締結し人材開発のサポートを行っている。さらにSMBC・三菱UFJ・みずほ・早稲田大学・産業能率大学などと提携し講座を提供。2018年には「ビジネス数学インストラクター制度」を立ち上げ、指導者育成にも従事している。
数学的なビジネスパーソンを育成する「ビジネス数学」を提唱し、述べ1万人以上を指導してきた教育の第一人者。世界中の学校と企業で「ビジネス数学」が学べる世の中にすることを使命としている。テレビ番組の監修やラジオ番組のニュースコメンテーターなどメディア出演も多数。著作は国内累計25万部超。実用書のほか作家として小説も発表しており、多くのビジネスパーソンに読まれている。BMコンサルティング株式会社 代表取締役 一般社団法人日本ビジネス数学協会 代表理事 国内初のビジネス数学検定1級AAA認定者 国内唯一のビジネス数学エグゼクティブインストラクター

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