(2)リテール・セラピーとは?
実は、近年、アメリカでは、リテール・セラピーなるものへの研究が進んでいる。成長を続けるオンライン・ショッピングやEコマースに対する実店舗ならではの魅力や意義が見直されるトレンドの中で、「そもそもお店でお買い物すること自体に気持ちを幸せにする効果がある」という説としてリテール・セラピー(Retail Therapy)、日本語で小売心理療法が科学的に証明されているのだそうだ。
小売心理療法と聞くと、買い物することでストレス発散することなのか?と思うがそう短絡的な発想でもないようだ。2014年と少し前になるが、ミシガン大学が学術誌に公開した消費者心理学に関する研究論文によると、様々な商品が置いてある店内で自分の気に入ったものを選択し、購入するというお買い物体験は、ただパソコンやスマホの画面を閲覧するよりも、悲しみに対抗するのに40倍(=4,000パーセント)も効果的であることがわかったとのこと。
また、調査に参加した買い物客は、買い物をしていない人よりも3倍(300%)も悲しみが少なかったという。これはなかなかすごい。
● Retail Therapy Is Real: Shopping Makes People Happier, Says Science
要は、買い物の選択が自分の環境に対する個人的なコントロールの感覚を回復し、悲しみを減らすのに役立つことを示唆しているんだそうだ。ただし、ストレスによる爆買いや無駄遣いを助長する可能性もあるため、破産せずにリテール・セラピーを活用することや、ウィンドウ・ショッピングで満足する方法など提案する記事なども当然のことながら出ていたりする。
● Retail Therapy: Does It Help?
そして、このコロナ禍の中で再びリテール・セラピーについて言及する様々な報道が出ており、例えば、経済誌フォーブスは7月19日付の記事で、小売のサブスクサービスが増えた理由として新たなリテール・セラピーなのではないかと言及。
● Covid Boosted Retail Subscriptions Up To 145%: The New Retail Therapy?
他には、リテール・セラピーとして買うお気に入りの商品ジャンルについてのアンケート調査なども出ている。それによると、トップ5は以下のとおり。
1位:洋服やアクセサリー(51.3%)
2位:家庭用品、庭用品(17%)
3位:健康グッズやパーソナル・ケア用品(12.6%)
4位:家電製品(10.6%)
5位:音楽(0.8%)
その他(7.7%)
● COVID-19 Insights: We’re Ready For Retail Therapy
コロナ禍で外出が減ることで不要不急の品々は買い控えの傾向にあるはずが、このアンケートでは、半数超えの圧倒的な1位が『洋服やアクセサリー』なのである。
必要だから購入するもの以外の趣向品こそ不安定なこのご時世にこそ必要なのかもしれないし、小売関係者の方々にとっては特にこの小売心理療法には売れるヒントが潜んでいるのかもしれない。
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