「台湾併合?ならば戦争だ」中国に激怒のトランプが蔡英文に送った親書とは

 

トランプが蔡英文総統に送った「親書」の本気度

そして表には出てきませんが、習近平国家主席が自らの政権任期内で成し遂げたいゴールNo.1である“台湾併合”を中国政府が実行しようとした場合、具体的にアメリカとアメリカ軍がどのような行動を取るのかという内容にまで議論は及んでいるようです。

アメリカ政府側の首席代表はアザー長官でしたが、この訪問にはホワイトハウス、ペンダゴン、国務省などからも幹部が帯同しており、情報によると、アザー長官はトランプ大統領からの“親書”(外交関係がないので、呼称については要チェック)を蔡総統に手渡し、有事の際のアメリカのフルコミットメントについて言及したのではないかと推察できます。

この【台湾トリガー】をトランプ大統領とアメリカ政府に弾かせたのは、国際世論(注:欧米の見解)を無視して進められる香港国家安全法に基づく中国政府による民主派勢力に対する弾圧です。

先週にはアップルデイリーのジミー・ライ氏が逮捕・拘束され、その後、Next Digital本社への強制捜査の実施を行うことで、香港社会が欧化してきた報道・言論の自由を踏みにじり、最近では“民主化・学民の女神”と呼ばれ民主化運動の中心的人物であった周庭(アグネス・チョウ)女史を拘束して、再度盛り上がる民主化運動に対して冷や水を浴びせる動きを取りました。ある情報筋の言葉を借りれば「民主化運動と民主派に対する強力なパンチ」を見舞ったと言えます。

これに対してトランプ政権は、キャリー・ラム香港政府行政長官をはじめとする11名を制裁対象にし、それに応酬する形で中国はMarco Rubio・Ted Cruise両上院議員を含む11名を制裁対象にするという【11人制裁の応酬】を行いましたが、トランプ政権にとっての“主戦場”は、香港ではなく、カードを切ることで台湾に設定されたと言えます。

時を同じくして、中国全人代は公式に「香港立法会選挙の1年延期」を決議しましたが、大方の予想に反して民主派議員の排除は行わず、議員全員の任期を1年延長するというsurpriseを行いました。これは実際には、台湾問題カードを突き付けてきたトランプ政権の動きを受け、「これ以上、アメリカを刺激すると確信的利益と位置付ける台湾問題の“解決”(注:中国にとっての)を困難にし、台湾を舞台にアメリカとの正面衝突に繋がりかねない」との懸念から、「アメリカに対して弱腰の態度はとれないが、あまり今は刺激したくない」との習近平国家主席の“苦悩”が見て取れますが、米中間にすでに生じている様々な緊張を緩和する効果があるかどうかは不明です。

香港や台湾という中国にとっての核心的関心事項での直接的な衝突を避けたいとの思惑からか、それともピュアな覇権的、そして地政学的な関心からか、中国は“欧米諸国から制裁措置を受ける国々”を次々と取り込み、世界全体を舞台にして、何とか米欧と力のバランスを取りに行こうという動きが見えます。

アメリカの裏庭でナイフを突きつける中国

先日、スピード合意したカンボジアと中国のFTAもそうですが、中国はラオス、ミャンマー、パキスタンに経済的な支援をテコに取り込みを始めていますし、アメリカが“敵対する”イランとは現在、中国からのインフラ支援の見返りとして25年にわたりイランから原油の供給を受けるという合意を行おうとしています。

加えて、ベネズエラのMaduro政権を全面的に擁護してアメリカの裏庭である中米地域でアメリカの喉元にナイフを突きつけようとしています。

結果、6月末の国連人権理事会で行われた香港国家安全維持法の是非についての議論では、53か国の途上国が中国支持を行い、先進国27か国の中国批判を大きく上回るという成果まで取り付けました。

世界銀行の調査では、すでに一帯一路政策やコロナ支援と題した支援は68か国に提供されており、国際社会での中国の影響力拡大の規模と戦略が透けて見えます。

米欧が制裁を盾に言うことを聞かせようとする中、困っている対象国を背後から経済的にフルサポートするという巧みな戦術で支持を拡大しています(とはいえ、年率3.5%ともいわれる高利子での貸し付けが多く、債務の罠との噂もありますが)。

確実に米中を軸とした2ブロック化が進められていることが、ここからも分かります。

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