【書評】元中国人が息子に実践。「正しい日本人」に育てる教育法とは?

 

「日本的美学と武士道精神を具体化した史上最高の日本人、日本武士のなかの武士、この国の歴史のなかで輝いたもっとも素晴らしい人物といえば、それは間違いなく、私自身が敬慕してやまない、かの西郷隆盛、東洋最大の英雄と先聖である南洲翁なのである」。元中国人である石平が日本の美学と武士道の心を理解できるようになったのは、西郷南洲の生き方と死に方を知ってからだ。

中国にも英雄豪傑はいくらでもいるが、西郷のような無私にして高潔の士はついに一人も出なかった。「権力はけっして私利私欲の限界を超越することができない。それこそが中国社会の法則であり、中国の歴史の不幸の源であった」。西郷は日本史上最大の政略家でありながら、どこまでも高潔無比、清誠純一の生き方を貫いたといわれる。石平は西郷を「君子」そのものだとまでいう。

そして西郷のすべてを人間精神の見本として、我が子にたっぷり教えたいと。さらに、彼が成長するに従い「論語」や漢詩などの中国古典を充分に教えるつもりだという。中国の古典と文学は東洋的教養の欠かせない一部であり、〈素晴らしい日本人〉となるために必要な養分であるからだ。しかし彼は文化的意味合いにおいて、日本人としての自己を確立することができるだろうか。

「そのとき、父親と人生の案内人としての私は、彼のアイデンティティー確立を、いったいどうサポートすべきなのか。私はいったい、どのようなことを彼に教えることによって、その人生最大の課題解決の一助になれるだろうか」。その答えも日本の歴史にあった。それは江戸前期の優れた儒学者、兵学者で、偉大なる思想家、山鹿素行の「中朝事実」にある。なんと、「日本こそが本当の中華である」。日本思想史上のコペルニクス的展回!素晴らしい!

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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