およそ40年ぶりとなる記録的円安で、圧迫され続ける国民の生活。なぜ高市政権は、この状況を「放置」し続けるのでしょうか。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では作家で米国在住の冷泉彰彦さんが、日本経済を「純粋円建て」と「基本ドル建て」に分裂させる二重経済の構造を分析。その上で、円安を加速させる政治のメカニズムやその先に待ち受ける危機、さらに二重経済を緩和するために必要な改革について考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:「円安と二重経済の問題」を考える
1ドル180円も時間の問題。「円安と二重経済の問題」を考える
日本の政治経済の状況は、更に動きを見せてきています。まず、現状としては、円安が止まらなくなってきました。
ドル円で、160円から162円という局面では、小規模な介入を感じさせるような動きがありましたが、その後、162円から164円という動きについては、静かに進行しているという印象です。このままでは、180という水準も視野に入ってくるのは時間の問題と言われ始めています。
現在でも円安は日本経済に大きな影響を与えていますが、仮に180円まで円安が進めば、その影響は現在よりも一段と大きくなります。
海外で稼ぐ多国籍企業には追い風となる一方、輸入価格の高騰によって家計や中小企業には大きな負担となり、日本経済全体としては「恩恵と負担が同時に拡大する」状況になると考えられます。
近年の160円台前後の円安局面でも、輸出額が伸びる一方で、エネルギー輸入額の増加によって貿易赤字が続く場面が見られました。180円まで円安が進めば、こうした傾向はさらに強まる可能性があります。
仮に180円になった場合、これは現在の164円からみれば、+9.7%ということでかなり大きな数字です。輸入品である建設資材、食糧、エネルギーなどは軒並み「現時点での既に高くなった水準」からほとんど10%押し上げられます。反対に、164を180で割るのであれば0.911ですから、インバウンドから見れば、十分に安い日本の物価が更に1割下落することになります。
180円になると、日本旅行は外国人にとって非常に安く感じられます。「日本は物価が安い国」という印象を一段と強く持つことになります。現在でも、イラン情勢で航空運賃が高騰していますが、観光客は大きくは減っていません。これは、航空券に500ドル余計かかっても、「美味い寿司が信じられない値段で食べられる」のなら、差し引きチャラ、もしくは依然としてお得という感覚があります。180円になれば、この感覚が1割増しになるのです。
一方で、日本人にとってはホテル代が上昇し、人気観光地の混雑も深刻化する可能性がありますが、最大の問題は輸入価格です。エネルギーに関しては、イラン情勢、ウクライナ情勢で軟化の可能性がありますが、問題は食糧と資材、更には医薬品の原料なども大変になります。
国内産業の中では、現時点でも国内需要向けの外食や食品加工業の廃業が増えていますが、この動きが一層加速することになると思います。一番大変なのは家計です。現時点でも総選挙の曖昧な公約である「食料品消費減税」論が出入りしていますが、180円水準の円安となれば、その要望は更に大きくなるでしょう。
ここで150円から160円の水準で起きたことを考えてみれば、例としては、
「人件費の高騰に加えて資材の高騰により、大規模な再開発プロジェクトがキャンセル」
「コミュニティで親しまれていた、ラーメン店やケーキ屋がこれ以上の値上げは不可能と判断して閉店」
といった現象が起きたわけですが、仮にドル円が180ということになれば、更にこうしたケースは増えるでしょう。
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