「食料品1%減税+給付」公表で瞬殺されかねない内閣
反対に、一番困るのは、供給はドル経済圏から「しか」来ないが、需要は円経済圏という場合です。いわゆるデジタル赤字というのは、この構造があるので垂れ流しになっているわけです。
ですから、物理的に日本国内で起きていても、インバウンド需要に応える観光業はドル経済であり、デジタル赤字は金額を膨張させながら円経済圏を蝕んでいることになります。
例えばですが、同じように午前9時頃にビジネスカジュアルの出で立ちで山手線なり御堂筋線に乗っていたとしても、その人のビジネスがドル圏に属していれば、円建てではかなりの高給を取っているかも知れません。年収で800万とか1,200万というのは、そういうことです。
一方で同じような格好をしていても、純粋に円経済圏に縛られているようですと、年収も上がっていかないということになります。例えば大学を出るような年齢の若者に、将来はどんな進路を推奨するかということになれば、何も他に条件がない場合は、とにかくドル経済圏に属することを勧めざるを得ないということになります。
問題はこの円安が政治に結びついていることです。現在の政局と円安には、次のようなメカニズムが回っています。
- 高市政権は「積極経済」を標榜しているので、国際市場からは財政の緩みを警戒されている。その結果、円安が進行している
- 過度の円安はダイレクトに物価高につながるので、給付と介入によって何とか変化を緩和してきた
- けれども、商社メーカーなど多国籍企業は円安選好なので、164円水準も歓迎という状況
- 問題は、ここから「食料品消費税1%+給付」に動くことの是非 ←今ここ
という状況です。ここからのシナリオですが、「1%+給付」に動くかどうかは、大きなギャンブルになります。既にそんなことは無謀ではないかという金融関係の記事は英語圏で出回っています。
ですから、7:3程度の割合で、「食料品1%減税+給付」を公表した瞬間に、英国のトラス・ショックの再現となって、内閣が瞬殺されてしまう可能性があります。
言ってみれば、この間、皇室典範の問題や副首都の問題で色々と議論したり迷走したのも、「減税+給付」を「やりたいが、できない」中での政治的時間稼ぎであったという指摘も可能です。
どうして時間稼ぎをしたのかというと、少し待てばイラン情勢+ウクライナ情勢が好転し、原油価格が下がってインフレが緩和されるからです。そうなれば、「減税+給付」を要求する声は低くなるかもしれず、その場合はさらなる時間稼ぎが可能になるからです。
つまり、厳しい言い方をするのであれば、政権は時間稼ぎをするために時間稼ぎをしているということが言えます。だったら、「こうなったら、減税+給付をやったらリズ・トラスの二の舞になって国民に迷惑をかけるのでできない」という腹の括り方をする手もあるのですが、それは理念とは別の大衆政治家というプールの中で泳ぐ宿命をもった総理にはできない相談でしょう。
さて、この時間稼ぎのための時間稼ぎですが、戦争の展開が緩和されて原油価格が下がるというだけではないと思います。
例えばですが、良いタイミングを逸してしまったので、利上げをして日米金利差が圧縮しても、円が反騰しないとか、金利が更に一段高となった場合は、反対に環境が悪化したので「消費減税」はできないことになります。せっかく時間を稼いでも、事態がそこまで悪化してしまうと、「この間の政策の失敗」ということで、内閣は窮地に追い込まれてしまいます。
この記事の著者・冷泉彰彦さんのメルマガ









