「二重経済」の間にある格差をより増大させる円安
こうした状況を一言で言うならば、「二重経済の進行」ということになります。二重経済というのは、日本経済が「ドメスティック(純粋円建ての経済)」と、「インターナショナル(基本ドル建ての経済)」に分裂するということです。
狭い、正しい意味での日本経済、つまり日本のGDPに限ったとしても、円経済とドル経済という二重性は厳然としてあり、円安というのは、その二重経済の間にある格差をより増大することになります。
具体的に見て行きましょう。
純粋な円経済というのは、日本の純粋な内需、つまり買う側(消費者)も提供する側(生産者)も円建てという世界になります。ここでは、円安により輸入のエネルギーや資材、原料は値上がりするので、価格に転嫁しなくてはなりません。
ですが、純粋な円経済では円で給与や価格が決まっています。給与の場合は今は8月になろうという時期ですから、年度の残り、つまり27年3月までは基本的に変わりません。年金の額も同じです。また、官公庁の予算、国内企業の予算は固定されており、円で縛られています。
年度が変われば新しい年度の予算がつくし、給与のアップは多少はあるかもしれません。ですが、基本的に日本国内というのは、人口減が既にほぼ決定しているので、規模の経済が改めて拡大に向かう可能性はありません。
ですから、国内だけをターゲットとするビジネスは、先が見通せないというより、縮小という未来が見通せているので、どうしても値上げや賃上げには踏み切れないという問題があります。
一方で、純粋な円経済という観点では、財務省の利害は少し違います。財務省としては国債残高という借金は円建てがほとんどですし、税収も円建てです。ですから、現在は物価高のために史上空前の歳入増となっており、その歳入が国家債務の返済に回ることになります。
では、財務省としてはどんどん円安になればいいのかというと、決してそうではありません。円が叩き売られて、円安になるというのは通貨価値が損なわれることと同じです。
通貨の価値が下がれば、既に発行されている国債の価値も下がります。ということは、元本返済+金利の見込みで構成されている国債の市場価値は下がり、金利は上がっていきます。発行済の国債の金利が上がれば、以降発行する国債には高金利を付ける必要が出てきますし、以降は金利の支払いは膨張してゆきます。
ということで、アッという間にインフレによる歳入増は、国債の利払いでチャラかマイナスになってしまいます。
一方で、ドル建ての経済の側からすれば、円安になれば円建ての数字はどんどん膨張します。例えばドル圏、あるいは人民元やユーロの地域で売上が上がり、利益が上がれば、その多国籍企業の円建ての業績は膨張していきます。
EVやAVの革命により、自動車業界は「明日をも知れない」不透明感の中にありますが、そんな中でも多くの企業が「史上最高益」となっているのは、とにもかくにも売上も利益も株価も、円建てになれば膨張するからです。
また、一見すると国内産業にように見える観光業や外食産業も、インバウンド市場を確保した途端にドル経済圏に入ってくることになります。円建てでは値上げでも、ドルに倒すと「お手頃価格」になってインバウンド需要がドッと流入するのであれば、この分野では勝っていくことが可能になります。
この記事の著者・冷泉彰彦さんのメルマガ









