「あなたは人間じゃない」にどう反論する?哲学者も悩む意識のハードプロブレム

 

サールが提示した「中国語の部屋」では、中国語をまったく理解していない人物が、小窓のある部屋に閉じ込められています。

その人物は手元にルールブック(いわばコンピュータ・プログラム)が与えられています。その人物はこのルールブックを用いることで、小窓を通じて部屋の外から与えられた中国語の質問に完璧に回答することができます。

この「中国語の部屋」の中の人物が実は人間型コンピュータだと考えてみてください。手順に従って完璧な回答を出力しますから、質問者はこの人間型コンピュータを、コンピュータとは考えないでしょう。つまりこのシステムはチューリング・テストに合格することになります。

しかし、部屋の中にいる人物は質問に対して何も理解していません。言い換えると質問の内容に対して何も思考していません。そもそもこの人物は中国語を理解できないのですから。ただただルールブックの指示どおりに作業しているだけで、質問の内容や意味を何も考えてはいません。

以上から、指示に従って実行されるコンピュータの計算と、人間の思考とは別ものであり、チューリング・テストを通過したからといってコンピュータが思考しているとは言えないことになります。それは見せかけであり、偽装だということになります。

これがサールの示した「中国語の部屋」の結論です。

「中国語の部屋」が提示するさらなる問題

もちろん、サールに対する反論もあります。

例えば私が「週末は何をしていたの」と問われたとします。私は週末にしていたことを思い出して、その人に語るでしょう。

この時、私の脳内では特定のニューロンが一斉に活動し、その結果が音声パターンとしてアウトプットされることになります。

しかしながら個々のニューロン自体は質問の意味など何も理解していないはずです。純粋な物理的活動です。この物理活動がいかに質問を理解して回答を生み出すのかは、今もって謎です。

このような観点からすると、中国語の部屋も、中身はともかく、適切な回答を返すのであれば、質問の内容を理解していると考えていいのではないか、とも主張できるでしょう。

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