政府は、新型コロナウイルスの感染対策として設けていた、イベントや催事における開催制限を9月19日から改定する旨通達しました。これにより、映画館など原則発声が想定されない施設や催物は、収容率100%での営業が認められることになります。事業者にとっては喜ばしい決定とわかった上で、利用者として残念がるのは、メルマガ『8人ばなし』著者の山崎勝義さんです。映画好きの山崎さんは、コロナ対応による映画館の快適さから、映画館の座席がストレスだらけだったことに、改めて気づいてしまったようです。
座席のこと
新型コロナウイルスによってエンタメ業界もかなり傷ついた。と言っても一方では巣籠り需要もあった訳だからホームエンターテインメントに関しては寧ろ堅調の部類であったろう。問題は小屋の方である。映画にしろ演劇にしろライブにしろ、これほどパンデミックと相性の悪いものはない。何しろ、三密状態をできるだけ長い期間続けることが興業的な成功を意味するからだ。
こういった各種イベントを観る側(つまりは観客)の動静によって区別し、静的な方を収容率100%以内、動的な方を50%以内とするといった方針が政府より発表された。例えば映画を観て騒ぐ者は原則いないから映画館は前者となりルール上満席まで客を入れることができるようになる。これはきっと喜ぶべきニュースなのだろう。
それを分かった上でのことなのだが、業界関係者には大変申し訳ないと思いつつも「このまま50%で良かったのに」と身勝手にも考えてしまう自分がいるのである。50%収容なら自分の席の前後左右は必ず空く。荷物問題も解決、冬場の上着問題も解決である。さらに映画鑑賞において重大なストレス要因となる前方視界の問題も解決である。そして何より映画館における永遠にして最大の懸案事項である、肘かけ問題が解決するのである。この視聴環境なら堂々と両方の肘で両方の肘かけを占有できるのである。体を右に寄せても左に傾けても自由である。ああ、何という幸福か。
大体、座席の設計者も人が悪い。例えば、列の一番左の席の左の方の肘かけを取り付けずにいたらこういった問題は起こらないのである。こうしておけば自動的に自分の右側の肘かけに自分の占有権があると知れるからだ。
ついでに言えば映画料金も高い。世界屈指の高額設定である。ならば座席ぐらいはセパレートタイプにしてその隣には手荷物ボックス兼サイドテーブルくらいあってもいいのではないか。もちろん肘かけは両方とも使わせてもらう。これは決して贅沢な願いではない。
我々はたぶん選択肢がないから我慢しているだけなのである。今仮にどこかのシネコンがこの座席レイアウトを採用したらどうだろう。きっと観客はその付加価値を魅力と思うに違いない。これは飽くまで個人的意見だが、そんな映画館があるなら3000円くらいまでなら納得して払える。
しかし残念ながら当分それは無理のようだ。という訳で、収容率100%となってしまった劇場で、荷物問題、上着問題、視界問題、そして何より肘かけ問題に頭を悩ませながら、大好きな映画をこれからも観続けることになりそうである。
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