いうまでもなく、麻生氏は派閥の拡大をめざしてきた。「大宏池会構想」もその一環だが、2017年5月、山東昭子氏を派閥領袖とする「番町政策研究所」との合流により「志公会」を結成、党内第2派閥に躍り出た。
だが、図体ばかり大きくなっても、麻生派に鉄の団結があるとは思えない。麻生氏はこの9月20日で80歳を迎える。ところがこれという後継者が育っていない。
河野太郎がいるではないか、というが、麻生氏はいまいち気乗りがしないようなのだ。第一に、河野氏が神奈川県連つながりで菅義偉新首相に可愛がられている面が気に入らない。だから「太郎はもっと礼儀や社会常識を身につけなければ」などと理屈をこねて、総裁選への出馬意欲を抑えにかかる。
麻生氏は心身ともにタフな人だが、もちろん総理再登板など、どだいムリな話だ。56人の麻生派国会議員にしてみれば、総理をめざす人材を担いで結束したいだろう。そういう意味で、麻生氏にはたえず不安がある。
たとえば、岸田氏を支援するとなれば、総裁選に意欲を燃やす河野氏が黙っていないわけである。いくら麻生氏が説得しても、河野氏は意地にかけて出たかもしれない。そうなると、河野氏を支持する若手の反乱が起こり、麻生派は分裂する恐れさえあったのだ。
そもそも父、河野洋平がつくったグループが母体だから、河野太郎氏が麻生派に属しているわけで、麻生氏に心酔しているわけではあるまい。もちろん今のところは麻生氏の言うことを黙って聞いているが、いざとなったら自分のグループを旗揚げしかねない。
麻生氏は今回、菅政権誕生の一翼を担ったが、内心は複雑なのではないか。菅首相が、安倍前首相のように麻生氏を頼るわけではないからだ。ひと癖もふた癖もある菅首相は、麻生氏にとってこのうえもなく扱いにくいはずである。
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