では数学ではどう考えるか。このときのそれぞれの期待値はこうなります。
- Aの期待値=1億円×0.5+0.5億円×0.5=0.5億円+0.25億円=0.75億円
- Bの期待値=2億円×0.2+0.5億円×0.8=0.4億円+0.4億円=0.8億円
確率という数学を使えば、選択すべきはBとなる。Bが答えだ。
しかし現実はどうだろう。AとBの期待値はわずか0.05億円の差でしかない。その差をとってBを選ぶことは果たして「割に合うのか」という視点を持たないだろうか。
0.05億円の差のためにあえてハイリスクな選択肢を選ぶか?それはちょっと怖い気もする。ならば今はある程度「計算」できるローリスクな選択をしておこうかな…、結論はA…。といった答えの出し方をするのが人間です。確率の数字がそのまま答えになるわけではない。人はその数字に感情を乗せて、答えを出します。やはり「数字→感情→答え」なのです。
そろそろまとめへ。これから皆さんは仕事やプライベートにおいて様々な確率の数値を見ることでしょう。しかしその数値の大小がそのまま答えを教えてくれるわけではありません。
仮にその数値をそのまま答えにし、結果としてあなたの望むものが手に入らなかったとしても、それは決して数学のせいではありません。机上の数学は必ず正解が存在しますが、人生で使う数学やビジネス数学は正解など存在しません。当然、あなたに正解を教えてくれるものでもありません。
確率で得られるその数値の差はあなたにとって「割に合うのかどうか」を問いかけてください。その問いの答えが、あなたの答えです。
ステイホームを忠実に守った人の感染率と、外で遊びまわった人の感染率。当然その数値は後者のほうが大きいのでしょう。一方、ステイホームという自粛生活をすることで失うものもあるでしょう。この数値の差と、選択した後の人生の差。それはあなたにとって割に合うのかどうか。その答えが、この半年の人々の行動を決めていたはずです。感染症は、世界中に確率思考を教えたのです。
image by: Shutterstock.com