誰の指令か?「学術会議は諸悪の根源」というデマを流布する人間の正体

 

しかし、甘利明に続いて日本学術会議を攻撃したのも、甘利明と同じ自民党の閣僚経験者である「違法献金おじさん」こと下村博文でした。自民党の政調会長、下村博文は、甘利明のデマの翌7日、日本学術会議について「政府に対する答申は2007年以降出されていない」などと述べて、日本学術会議が13年間も仕事をしていないという印象操作を行なったのです。

物事は「聞かれた」から「答える」わけで、「諮問(しもん)」があっての「答申」です。日本学術会議は、政府から「これこれこういう問題があるが、どう考えるか」という「諮問」を受けて、初めてその問題を議論し、まとめた「答申」を政府に提出するのです。13年間も「答申」がないという下村博文の指摘は、政府が13年間も「諮問」をして来なかったというブーメランなのです。それでも、現職の閣僚経験者がこうした発言をすれば、多くの人は日本学術会議に対して「何も仕事をしていない無駄な組織」という印象を持ちますよね。

誤解している人がいると困るので補足しておきますが、日本学術会議はとても多くの仕事をしています。日本学術会議が専門的な立場から意見を表明する方法は「答申」「回答」「勧告」「要望」「声明」「提言」「報告」の7種類がありますが、「答申」が政府からの「諮問」を受けての対応であるように、「回答」は省庁からの審議依頼を受けての対応です。そのため、この2つに関しては、政府側、省庁側の問題になります。

一方、他の5つは、日本学術会議側から自発的に意見を表明するものですが、このうち最も数多く出されているのが「提言」です。下村博文は「政府に対する答申は2007年以降出されていない」と述べましたが、2007年以降これまでに、日本学術会議は自発的な「提言」を321件も政府に提出して来ました。今年は過去10年で最も多く、先月9月末までに68件もの「提言」が提出されています。

今年の「提言」を見てみると、科学技術に関する専門的なものから、あたしたちの日常生活に直結したものまで、とても幅広く扱われていました。一例を挙げると、子どもや妊婦さんの受動喫煙対策の充実を求める提言や、LGBTの人たちが差別されずに同じ公的サービスを受けられるようにするための法整備を求める提言など、専門的な立場から述べられています。

また、1年半前の2019年5月には、いつ発生するか分からない感染症のパンデミックを想定して、ウイルスなどの微生物や病原体に関する専門教育の充実を提言していました。当時の安倍政権は、この提言をスルーしましたが、もしもこの提言を聞き入れてきちんと対応していたら、現在の新型コロナ禍の状況も少しは違っていたかもしれません。

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