グローバリズムによる分断を世界に気づかせたトランプ大統領の功罪

 

2.グローバリゼーションは格差を拡大する

世界を一つと考え、自由な貿易とサプライチェーンを気にビジネスを組み立てるならば、最も人件費の低い国で生産し、最も高い価格で購入してくれる国で消費することが正解となる。しかし、そのビジネスをコントロールするには、大量生産大量販売が必要になる。

大量生産大量販売には巨大な資本が必要である。

グローバルサプライチェーンとは、グローバルなスケールの分業である。分業の恩恵を受けるのは、サプライチェーン全体をコントロールし,価格決定権を持つことだ。グローバルなサプライチェーンに組み込まれた工場は、常に海外とのコスト競争に晒され、最低限のコストが押しつけられる。商品のコストは押えられるが、製造業としては儲からない。

グローバルビジネスの利益を享受できるのは、消費者と大企業だけである。これを進めれば、中小零細企業は淘汰されるのだ。

消費者は安い商品を購入できるようになるが、消費者は一方で供給者であることも多い。市場価格が下がり、市場規模が縮小すれば、企業の売上も利益も下がる。そして社員の給料も下がる。商品価格は下がるが、収入も下がるというデフレスパイラルに陥るのだ。

日本人は身を持ってこれを経験している。コストの低い国に製造拠点が移転することで、国全体のGDPが下がり、非正規雇用が増え、子供の出生率も低下した。

グローバリゼーションは先進国の格差を拡大する。新興国に富裕層を生み出すが、低いコストに抑えられる労働者の所得は一定以上には上がらない。結果的に新興国も格差が拡大する。また、新興国になれない国は資源や農産物を現金に換えなければならず、やはり

貧困化が進む。

貨幣経済、市場経済の拡大と国際的な分業は国際的な格差を生み出しているのである。

3.常に監視される情報統制社会

一定以上に経済格差が拡大すると、貧困層の数が増え、不満が蓄積される。不満分子が組織化され、反政府的な行動が出てくる。商店を破壊し、商品を強奪するようになると、ビジネスは成立しない。

商取引に暴力が介在すると、市場や社会そのものが崩壊してしまう。

それを防ぐには、不満分子の組織化を防ぎ、反政府活動を行う個人を特定し、逮捕することが必要になる。

中共は、町中に監視カメラを設置し、顔認証技術とAIを組み合わせて、個人を特定している。そして、その膨大なビッグデータをリアルタイムで通信するために5G回線が必要になる。

世界中にこの監視システムを普及されるには、世界的な通信網とビッグデータの収集が必要になる。監視カメラだけではなく、SNSの画像や動画も検閲の対象になる。

香港では国家安全維持法が制定され、香港の独立を支持する個人は、香港在住であるか否かに関わらず、外国人であっても罪に問われる。

グローバリズムが行き着く先は、究極の監視社会につながっている。一部の特権階級が富を独占する体制を維持するために、善良な一般国民が監視される。こうなると、我々は何のために働いているのか分からなくなる。

個人の幸せのために働いていたはずが、気がついたら労働を強制され、利益を搾取される。そんな悪夢に少しずつ近づいているかもしれないのだ。 

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